「夢は何ですか」——。こう聞かれると、懐かしいような、ちょっぴり恥ずかしいような気持ちを抱くかもしれない。多くの人は大人になると仕事に多くのエネルギーと時間をとられ、自分の時間は少なくなる。働き過ぎといわれる日本人だけではなく、世界でもそう感じている人は多いようだ。だから「あなたの夢を現実にするのを手助けする」と言われるとちょっと身構えてしまうかもしれないが、フィンランドのベンチャー、Dreamdoは本当にそれが実現可能だと信じている。
創業者のサク・トゥオミネン氏は「何万もの人たちの夢を実現に近づけたい。“Dreamdoレボリューション”を世界中で巻き起こしたい」と語る。北欧で産声を上げた「夢ビジネス」は、われわれ大人が子どものころに感じた夢を抱く喜びを再び取り戻させてくれるのだろうか。
夢やプロジェクトをユーザー同士が共有
「Dreamdo」は2013年にスタートしたばかりのサービス。ユーザーはDreamdoのWebサイト内に自分の夢のページを作り、それについての情報(Wikipediaやニュース記事など)や、自分の行動(写真やビデオ)を集めていく。Facebook、Twitterなどソーシャルサービスの共有ボタンもあり、投稿に自分のWebサイトを埋め込むこともできる。ユーザー自身、あるいはユーザーの夢をフォローしたり、メッセージを送ったりできるコミュニティー機能もある。
一口に夢と言っても、実にさまざまだ。Dreamdoのサイトを見ると「子ども向けの絵本を書きたい」「ベルリンに行きたい」「陶芸家になりたい」「ハーフマラソンを完走する」などの夢が並んでいる。このように個人的な夢もあれば、「世界の珊瑚礁を守りたい」「地元の農家を支援する」といった外部への呼び掛けの要素を持つ夢もある。
Dreamdoを創業したトゥオミネン氏はTV業界出身。「人間の心、幸福感のようなものに興味があった」とし、起業に至った経緯を次のように語る。
「米国のある調査では、20才から50才の54%が“時間がどんどん過ぎていくだけ”とむなしさを感じていることが分かった。人が幸福に感じるのは、夢があってそれに向かって何かをしているときだ。だからこそDreamdoのミッションは、人々が夢を実現するのを助けることなのである」
だが現実的には、たとえ夢があったとしても実現が難しいために諦めてしまうことが少なくない。どうやって夢を叶えるというのか。ここでWebとソーシャルの力を活用するのがDreamdo流だ。
「夢は公言すれば実現に近づく。例えば、“本を出版したい”という夢を口に出したとしよう。それに対してコミュニティーがアドバイスし、出版社を紹介するようなことがあれば、より実現が近くなる。他人と共有することで、ワクワク感が得られるし支援されていると実感できる」とトゥオミネン氏。
例えば、同社COO(最高執行責任者)のラッセ・レポニエミ氏の場合、とある縁でグアテマラの靴の魅力を知り、フィンランドで販売できないものかとDreamdoでプロジェクトを立ち上げた。靴の製造まではうまくいったが、肝心のフィンランドへの輸送をどうするか、Dreamdoで疑問を投げたところ、(自分のDreamdoを共有している)Facebook経由で友人の友人から支援の手が挙がった。グアテマラに帰省中のパートナーが間もなくフィンランドに戻るので手伝おうか、と助けを差し伸べたのである。結局、このつながりを生かし、荷物の料金を払うことで靴を無事に運ぶことができたという。
このようにコミュニティーで助け合うような場面はよく見られる。「夢を実現したいという“良い精神”の集まりが良い効果を生んでいる」とトゥオミネン氏は述べる。Dreamdo内ではハッシュタグなどを利用して、似たような夢や課題を持つ人がお互いを発見しやすくしているという。
ソーシャルの要素だけならFacebookで十分かもしれない。だが、トゥオミネン氏は「Facebookはタイムラインのみで文脈がない。Dreamdoは自分の夢についての文脈があり、願いや思いのあるストーリーテリングプラットフォームだ」と差異を強調する。類似したサービスにモバイルアプリの「Everest」があるが、Everestは目標を中心にステップを提示し、その目標にユーザーが加わるというアプローチをとるのに対し、Dreamdoはあくまでユーザーが中心としている。
Dreamdoには個人の夢以外に、企業や学校の夢も並ぶ。例えば、ヘルシンキの学校では、スウェーデン・ストックホルムへの修学旅行をプロジェクトにし、生徒たちはプロジェクトページにストックホルムに行ったらやりたいこと、見たいもの、それに関する情報を書き込んだ。いざ旅行に出発すると、道中の様子を写真やビデオで報告した。プロジェクトとそれに対する取り組み、結果が、物語として一目で分かるページが出来上がったのである。
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