破格の保守サービスが日本に上陸
「SAPやOracleのERPパッケージの保守サポートを両社の半額でお引き受けする」
こう語るのは、ソフトウェア保守サービスの独立系プロバイダーである米Rimini StreetのCEOを務めるセス・ラビン氏だ。同社は3月6日に都内ホテルで記者会見を開き、日本市場への本格参入を発表した。2005年の創業以来、これまで500社を超えるグローバル企業に「第三者ソフトウェア保守サポート」を提供してきた同社が、いよいよ日本上陸を果たした格好だ。
同社が現在、保守サービスを提供している製品は、SAPの「Business Suite」「Business Objects」、Oracleの「E-Business Suite 」「Siebel」「PeopleSoft」「JD Edwards」「Hyperion」「Oracle Retail」「Oracle Database」の9つ。いずれも広く普及している製品である。その費用は、ユーザー企業がSAPやOracleに支払っている年間料金の半額。ラビン氏の冒頭の発言にもあるように、この破格ぶりが同社のサービスの最大の特徴である。
ラビン氏は、破格ながらも高品質やユーザー指向に基づいていることも強調している。高品質については、経験豊富なサポートエンジニアによる迅速なサービスを24時間365日にわたって利用できるほか、サービスに関してISO27001およびISO9001:2008の品質認証を取得しているという。
また、ユーザー指向の観点では、バージョンアップの新旧を問わず、ソフトウェアを最大15年間サポート。これによって、ユーザー企業はこの間、ベンダーからアップグレードを強制されることがなくなるわけだ。さらに、日本を含む200カ国の税制改正や法改正に対応した修正プログラムを一切の追加費用なしで受けることができるとしている。
同社では日本市場への本格参入に伴い、2013年7月に日本法人として日本リミニストリートを設立。日本企業向けの営業およびサポート人員を大幅に強化しつつある。このほど日本支社長に就任した太田一矢氏は会見で、「米国本社がグローバル市場で提供している全ての保守サービスを日本市場でも提供する。日本専任のスタッフが日本語でサポートするとともに、米国、ブラジル、オーストラリア、インド、ドイツ、英国のエンジニアによる24時間365日のサポートも提供していく」と、日本でもグローバルと同様のサービスを展開していくと説明した。
ユーザー企業に保守サービスの選択肢を
以上が同社のソフトウェア保守サービスの概要だが、最も興味深いのは、なぜ料金を半額にしたのか、また、できたのか、だ。この点について、ラビン氏は次のように説明した。
「ユーザー企業はこれまで、SAPやOracleの製品の保守サービスに対して多額の費用を支払ってきた。両社の製品を利用する場合、一般的にソフトウェアライセンスの費用に加えて、その22%ほどの年間保守サービス費用が必要となる。例えば、ソフトウェアライセンス料金が1億円だとすると、保守サービスにかかるコストは年間2200万円にもなる。これらを合わせると、日本の企業が両社に支払ってきた費用は年間で1200億円にも上ると推定される」
「しかし、実際に行われている保守サービスの内容と照らし合わせると、この費用は高すぎる。SAPやOracleにとってはこの部分の利益率が90%以上といわれている。そうした状況から、ユーザー企業の間では高すぎる両社の保守サービスに不満が高まっていた。それでも長らく状況が変わらなかったのは、市場に競争がないことからユーザー企業には選択肢がなく、両社の言うがままに従わざるを得なかったからだ。われわれはそうしたビジネスモデルを根本から変え、ユーザー企業に保守サービスの選択肢を提供したいと考えた」
太田氏によると、グローバルにビジネスを展開する日系企業でも既に7社が同社の保守サービスを採用しており、最近になって国内でSAPユーザー1社、Oracleユーザー2社とも新たに契約を結んだとしており、「日本においてもソフトウェア保守サービスの“民主化”を推進していきたい」と力を込めた。
SAPやOracleにとっては、ビジネスモデルを根本から揺るがす動きとも見て取れるが、Rimini Streetがグローバルで400人規模のベンチャー企業ということもあって、そんなに大きな影響はないと見ているのだろうか。あるいは、状況に応じて保守サービスの料金体系を変えてくる可能性があるのか。両社の今後の出方も気になるところだが、ラビン氏によると、Oracleとは2010年から訴訟問題も抱えているようだ。その内容は明らかにしなかったが、それに絡めて同氏が語った次のコメントが印象に残った。
「どの業界でも市場を独占している企業は、市場を開放しようとする企業を排除しようとするものだ。しかし、市場の独占状態はそんなに長く続くものではない」
果たして、ソフトウェア保守サービスは“民主化”に向かうのか。注目しておきたい。
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