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なぜ2ちゃんねるは「転載禁止」を選んだのか――「まとめサイトVS住民」繰り返す歴史

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 匿名掲示板「2ちゃんねる」の人気板が相次いで転載禁止になった。「ニュース速報(VIP)」「なんでも実況J」「モ娘(狼)」(ハロプロ@2ちゃんねる)「ニュース速報+」「ニュース速報」——3月2日〜5日にかけて、投稿数上位のカテゴリでは、ほぼ全ての名前欄に「転載禁止」が明記された。

 これにより、各板を情報源にしていた2chまとめサイトが窮地に陥り、方針転換を余儀なくされている。月間1億PVを超える規模の大手まとめサイトは近年のネットユーザーにとって身近なツールとなっていたため、一連の動向は少なくない人々に影響を与える可能性がある。

画像名前欄に「@転載禁止」

 ところで、過去を振り返ってみると、まとめサイトを巡る騒動はこれまでにも何度か起こっている。今、あらためてざっくり歴史を辿ってみたい。


おさらい:まとめサイトとは

 まず、2chまとめサイトの位置付けを確認しておこう。基本は、2chのレス(書き込み)をコピペするだけだが、格好良く言えば“集合知”を生かしたモデルでもある。さらに、作業はPC1つで出来て、アドセンスやアフィリエイトにより収益も上げられる。ある意味、梅田望夫氏の「ウェブ進化論」を体現した存在だ。余談だが、漫画「ドラゴンボール」でも、一番強い技はみんなから少しづつパワーをもらう元気玉である。


出発点はVIP

画像書籍化された「泣ける2ちゃんねる」

 こうした2chまとめサイトは2000年前後からいくつかあり、2002年の「泣ける2ちゃんねる」は書籍化を果たしたが、現在のような形で注目を集めるようになったのは、2004年に新設されたVIP以降だ。VIPは、当時の投稿数1位だった狼を数カ月で追い越し、大量のネタを投下するようになる。その盛り上がりの中、2005年2月に“元祖”と呼ばれる「【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´)」が登場。同サイトがまとめることにより、VIPの勢いはますます加速する。


第一次ブログ連戦争

 ところが、まとめサイト経由での「厨房流入」(一般人の参加)に違和感を持つ“古参”や、人口増加によるシステム規制への不満から、「まとめサイトが悪い」という空気が2ch内で醸成される。そして、2006年にはまとめサイトのアフィリエイト収入などいくつかの伏線が張られた結果、「第一次ブログ連戦争」と呼ばれる抗争が発生。Whois情報から個人情報を取得→炎上という流れで、「オタク女的らくがきブログ!」「ニャー速」といった当時の人気サイトが、不特定多数のVIPPERにより閉鎖に追いやられた。


「嫌儲」の誕生

 この騒動から、金儲けそのものを批判する概念として「嫌韓」をもじった「嫌儲」(けんちょ、けんもう、いやもう)が誕生。2007年末には、営利目的への無断転載を禁止する「ニュース速報(嫌儲)」板が設けられた。しかし、当時の投稿数はランク圏外で、住民はあまりいなかった。


世代交代、影響力アップ

画像「痛いニュース(ノ∀`)」月間1億PV突破を「livedoor Blog」はプレスリリースで発表した(2011年)

 「第一次ブログ連戦争」により、まとめサイトでは世代交代が起こり、ニュース系をまとめていた「痛いニュース(ノ∀`)」や「ハムスター速報」が台頭。2008年には「やらおん!(今日もやられやく)」「はちま起稿」といったアニメ・ゲーム系のまとめサイトも誕生する。

 新興勢力は、2009年〜2011年にかけて、スマートフォン、Twitter・Facebookといった情報共有ツール(SNS)の普及により、かつてない隆盛を誇ることになる。なお、ネタ元の2chでも、2011年にはニュー速がVIPに次ぐ投稿数(05年は5〜7番)になっていた。

 年ごとの2ちゃんねるの人気板
2005年VIP、狼がツートップ。ニュース速報は5番手以降
2006年VIP>狼>なんでも実況V
2007年VIP>狼>ニュース速報+
2008年VIP>狼>ニュース速報
2011年VIP>ニュース速報>狼
2012年VIP>嫌儲>狼
2012年春VIP>なんJ>嫌儲
2013年VIP>なんJのツートップ体制

第二次ブログ連戦争

 しかし、こうしたまとめサイトの急成長はおよそ健全と言えない方向だったため、住民の不満は再び蓄積。2012年1月の「ステマ騒動」で爆発すると、ニュー速から嫌儲への住民大移動が起こり、嫌儲の投稿数はランク外から一躍2位に躍進する。

 同時並行で、「ゲーム業界、ハードウェア」板と「はちま起稿」の抗争が発生。議論が続いた結果、2012年6月に5大サイトが2chから転載禁止を宣言され、「第二次ブログ連戦争」が終結する(関連記事:「ステマ騒動」の矛先はゲハブログへ:ゲハブログ最大手「はちま起稿」が謝罪文を掲載、管理人交代へ


大手サイトの方針転換

 転載禁止になったサイトは、「2ch以外からネタを拾う」「趣味に特化する」「自サイトのコメントをまとめる」など、それぞれ方針転換をして再スタート。「はちま起稿」の場合、切り替えにより2chまとめ時代よりアクセスが飛躍したという。この頃、2chではなんJが投稿数2位まで成長し、専門のまとめサイトが乱立した。2012年秋には「カモフラージュ広告」が問題視され、掲載したまとめサイトが一斉謝罪する出来事もあった。


「2ちゃんねるビューア」の個人情報流出

 2013年には、2ch史上有数の事件が起こる。不正アクセスにより、有料ツール利用者の個人情報が書き込み履歴とセットで流出し、匿名掲示板の根幹が揺さぶられた。これにより、荒らし行為が明らかになった大手サイトが謝罪して閉鎖した。この事件は、2ちゃんねる運営サイドの収益低下をもたらし、2014年2月の管理人交代にも影響を与えているという。

 また、同年4月には「PINKちゃんねる」(2ちゃんねるの姉妹サイト)をまとめていた人気サイトが相次いで撤退し、一部で話題になった。理由は明らかにならなかったが、ドサクサに紛れて閉鎖するサイトの過去ログ数千本(容量33ギガ)を丸ごとコピーする愉快犯も現れた。


第三次ブログ連戦争(?)と現在

 そして、2014年。まず、2月上旬になんJ主導の炎上騒動が起こり、10サイト以上が閉鎖した。きっかけは複数あったが、「嫌儲」は依然として大きな原動力だった。なお、個人情報の入手には8年前と同じWhois情報が用いられた(関連記事:2ちゃんねるまとめサイトの連続炎上騒動 10サイト以上が閉鎖する事態に)。

 続いて、現在進行形の「転載禁止」騒動。運営体制が変わり、住民の意見が反映されるようになったことによる現象だが、興味深いのは意思決定に参加している人数である。

 例えば、「ライトノベル」板や「モ娘(狼)」の有効投票数は2桁であり、「ニュース速報+」でも3桁程度。VIPはさすがに数千票あったが、最大手まとめサイトのユニークユーザー数が1日100万であることを考えると、少ない数字だ。新管理人と交流するスレッドでは、こうした投票結果が粛々と伝えられ、実際に名前欄が変更されている。

 大多数のユーザーにとっては、「いつのまにか転載禁止になっていた」というのが実情だろう。今回の騒動も、これまでの構図(住民vsまとめサイト)で捉えることができる。しかし、大きな違いが2点ある。1つは住民がルールの範囲内で行動していること。そして、2つめはその影響力が計り知れないこと。人気板の「転載禁止」は、何をどう変えるのか。これから注視していきたい。

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