東日本大震災の発生から3年が経過しようとする2014年の今、被災地はさまざまな分野で継続的に復興に取り組んでいる。震災前から慢性的な医師不足が指摘されていた東北地方は、沿岸部の多くの医療機関が被災したことで地域医療の課題が顕在化した。そうした中、岩手県は2014年2月15日、「地域医療再生シンポジウム 〜岩手の今、日本の明日〜」を東京都内で開催。岩手県の達増拓也知事と地域医療の専門家が講演やパネルディスカッションを行った。
「被災地・岩手の提言 『地域医療基本法』の制定で医師の地域偏在の解消を 〜『日本の医療の再生』と『被災地の本格復興の加速』に向けて〜」というテーマで登壇した達増知事は、「医師の絶対数不足と地域偏在によって、日本各地が危機的な“地域医療崩壊”の状況に陥っている。特に現在の岩手県の状況は“日本の未来の縮図”だ」と強調する。その上で「地域医療の再生と被災地の医療復興なくして、日本の医療の再生は不可能。今こそ国民的な議論が必要だ」と語る。さらに、医師不足を中心に医療を取り巻く現状と課題、岩手県の施策を説明し、地域医療再生に向けた「地域医療基本法」の草案を発表した。本稿では達増知事の講演内容を踏まえ、被災地・岩手県からの地域医療再生の提言を紹介する。
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岩手県の一番の問題は「医師の絶対数の不足」
岩手県は、北海道に次ぐ1万5000平方キロの広大な面積を有し(東京都の約7倍)、人口は約130万人(東京都の約10分の1)。総人口は減少傾向にある一方、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は27.3%で超高齢社会となっている(出典:総務省統計局「社会生活統計指標—都道府県の指標—2013」)。