米Microsoftのスマートフォン責任者はフィンランドNokiaの最新スマートフォン「Lumia 521」を低価格端末とは呼びたくないようだ。だがこの低価格スマートフォンの米国での発売はMicrosoftにとって、スマートフォン市場をリードするAppleや韓国Samsung Electronicsから市場シェアを一気に奪うためのこれまでにない思い切った一手となる。
世界最大のソフトウェア企業であるMicrosoftはこれまで、主にNokiaや台湾HTCが製造する高価格なハイエンド端末へのWindows Phone OSの搭載に注力してきた。
だが小売大手Walmartで今月発売されるLumia 521の価格は販売奨励金なしで150ドル以下と、長期契約の縛りがなく最新ソフトウェアを搭載する新しいスマートフォンの価格としては比較的安価だ。
MicrosoftのWindows Phone部門の責任者を務めるテリー・マイヤーソン氏は先頃、シアトル近郊のMicrosoft本社で取材に応じ、次のように語った。「われわれには、メインストリーム市場に非常に高性能な端末を投入するチャンスがある。ここ数カ月間、われわれはそうした分野に取り組んできた。今後も国内ではこの市場を追求していく方針だ」
Lumia 521は4月末にショッピングチャンネルの米Home Shopping Network(HSN)で発売され、既に完売している。この4Gスマートフォンは米国以外ではLumia 520として販売されているミッドレンジの端末で、4インチのタッチスクリーン、5メガピクセルのカメラ、高精細ディスプレイなど、いくつかハイエンドな特徴を備えている。
このスマートフォンが今週Walmartにおいて、月額30ドルで無制限にデータ通信ができるT-Mobileのプランとともに、150ドル以下で発売される。長期的に見れば、多額の販売奨励金が組み込まれたiPhoneや、通常高額の長期契約が必要となるAndroidのハイエンド端末と比べて、はるかに安価だ。
HSNでの発売当初からのLumia 521の人気は、Microsoftにとってささやかな後押しとなっている。同社は2007年に登場したAppleのiPhoneにスマートフォン市場における初期の優勢を奪われて以来、モバイル戦略で苦戦を続けている。
MicrosoftはモバイルOSの刷新にも踏み切った。comScoreによれば、現在、同社のモバイルOSを搭載するスマートフォンは米国のスマートフォン市場で3.2%のシェアを占めている。一方、Appleのシェアは39%、GoogleのAndroid OSのシェアは52%だ。
Nokiaは現在Windowsを搭載するスマートフォンだけを製造している。同社が2013年1〜3月期に販売したLumiaは560万台と、2012年10〜12月期より27%増加している。ただし、iPhoneの数千万台という販売台数と比べるとまだごくわずかだ。
MicrosoftはWindowsスマートフォンの販売台数や売上の詳細を発表していないが、2013年1〜3月期にはスマートフォン関連の売上が2億5900万ドル増加したと発表している。これには、Microsoftが特許を所有しているいくつかの技術の使用に対し、Androidスマートフォンのメーカーから支払われるライセンス料が含まれている。
Microsoftによれば、Windowsスマートフォンは米国よりも米国以外の市場で健闘しており、例えば、メキシコやポーランドでは20%、英国でも7%近いシェアを誇っているという。
これは一部には、米国のスマートフォン小売市場を支配しているAT&TやVerizon Wirelessといった大手キャリアの影響力が海外ではそれほど強くないことによるものだ。
「AT&TとVerizonは素晴らしい提携相手だ。だが市場の力学が異なる地域、携帯電話事業者の販売戦略が米国とは異なる地域においては、われわれもうまくやれている」とマイヤーソン氏は語る。
AT&TやVerizonによる多額の販売奨励金は、長期のサービス契約と引き換えに提供されるものだ。このシステムのおかげで、米国ではユーザーはAppleやSamsungの最良のハードウェアを手に入れられる。同氏によれば、Windowsスマートフォンにも販売奨励金のシステムはあるが、Microsoftは米国市場のこの現状を打破するのに苦戦しているという。
「SamsungやApple、AT&T、Verizonにとっては、販売奨励金は強力なビジネスモデルだ。こうした企業はこのビジネスモデルのおかげですべてを上手く機能させ、シェアを伸ばし、利益を伸ばすことができている。成功しているビジネスモデルの当事者であれば、それを手放そうとはしないはずだ」とマイヤーソン氏。
こうした状況で戦うためには、Microsoftには価格以外の点でも差別化を図ることが求められる。
マイヤーソン氏によれば、Windowsスマートフォンの「キラーハードウェア」を投入した後の次なるタスクは、MicrosoftのOffice製品とXbox製品を活用し、仕事用のツールとしてであれ、最新の玩具としてであれ、「本当に新しいスマートフォン体験」を提供することだという。
「われわれはまだ能力を十分に発揮できたとは思っていない。OfficeとXboxという当社の主力製品を武器に、こうしたポケットサイズのモバイル端末で、仕事やエンターテインメントのユーザー体験を充実させたいと考えている。これから時間をかけてその点を発達させていきたい」と同氏。
なお、マイヤーソン氏はMicrosoftが「Surface」タブレットに続き、自社ブランドのスマートフォンを開発中であるとの報道を一蹴し、次のように語っている。
「Nokiaは素晴らしい仕事をしている。市場開拓に向けた当社の目下のエネルギーをNokiaはすべて受け止めてくれている」
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