米国経済の先行きが明るさを取り戻しつつある中、不夜城の華やかさにますます磨きが掛かるカジノの街、ラスベガスでIT業界の巨人、IBMが「クラウド」こそがコンピューティングの未来だとし、大きく舵を切ることを改めて宣言した。
米国時間の2月24日、ネバダ州ラスベガスのMGMグランドホテルで「IBM Pulse 2014」カンファレンスが開幕した。システム管理製品やセキュリティ製品のブランドだった旧Tivoliのイベントとして2008年から始まったPulseだが、今年は「プレミア・クラウド・カンファレンス」として装いも一新された。これまでのITマネジャーだけでなく、多くのビジネスリーダーや開発者らが参加し、その規模も8000人から1万1000人に膨れ上がっている。
クルマはiPhoneにタイヤが付いたものに?
「クラウドは自動車産業を根底から変える。クルマはもう鉄のかたまりではなく、Web APIの集合体になるだろう」── MGMグランドホテルのアリーナにゼネラルセッションのトップバッターとして登場したContinentalのブライアン・ドレースラー副社長はそう話す。
ドイツのハノーファーに本社を置く自動車部品メーカーで、いわゆる「コネクテッドカー」のソフトウェア開発を統括するドレースラー氏は、クラウドに接続された未来のクルマはiPhoneにタイヤが付いたようなものになると考えている。
Continentalは創業150年近い老舗。タイヤメーカーとしてスタートしたが、2006年にMotorolaから、翌年にはSiemensから相次いで自動車向けの電子部品事業を譲り受け、ビジネスを拡大している。昨年秋のフランクフルト国際モーターショーでは、自動車メーカー向けにコネクテッドカーのソリューションをIBMと共同開発することを明らかにしていた。
インターネットに接続されることでクルマがさまざまなサービスを消費する「家電」になるだけでなく、大量のデータを瞬時に分析し、将来を予測することで自動運転にも道が開ける。実際、Continentalでも2020年までに高度な自動運転、2025年までには完全自動化する計画をぶち挙げている。
先を見通すElectronic Horizon技術
その核となるのが、Electronic Horizon技術だ。地図情報を基に前方の道路を予測し、より安全で効率の良いクルマを実現する。低遅延で信頼性の高い通信が必要という課題はあるものの、同社の計画によれば、各車両に組み込まれたセンサーデータもクラウドでリアルタイムに分析したり、車両同士でもデータをやり取りすることで最終的には完全な自動運転を目指すという。
そんな野心的な取り組みを実現すべく、Continentalが選んだのが、オープンソースプロジェクト、Cloud FoundryをベースとしたオープンなPaaS、「IBM BlueMix」(コードネーム)だ。IBMはこの日、BlueMixのパブリックベータを昨年夏に買収したIaaSのSoftLayer上で提供することを明らかにしたばかりだ。
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