紙の本は、購入してしまえば「どの書店で買ったか?」が大きな違いになることはありません。しかし、電子書籍は「どの書店で買ったか?」で、その後の体験が大きく異なります。それは、音楽・映像・ゲームなどの配信サービスと同じように、電子書店がただ単に読み物をパッケージとして販売しているだけではなく、購入後の読書環境や保管に至るまでの総合的な「サービス」を提供しているからです。
国内でサービスを展開している電子書店はいくつもあり、まさに群雄割拠の様を呈しています。まだ「どこを利用すればいいのだろう?」と悩んでいる方も多いでしょう。どの電子書店もサービス内容を進化させ続けており、2012年度版の「電子書店完全ガイド」特集も既にやや古い内容となりつつあります。
そこで今回、「電子書店完全ガイド2013」と銘打ち、進化の著しい電子書店をレビューし直すことにしました。これまで通り以下の5つの要素に基づき、前回のレビューとの違いを中心に徹底解説していきます。
各項目について、3点を平均とし、いい所があれば加点、悪い所があれば減点という形で評点します。記事の最後で、評点結果をチャートグラフにしたものを用意しています。前回の評点と比較できる形で表示していますので、そちらも参考にしてください。
なお、どの電子書店も以前と比べてサービスレベルが向上しているため、前回は加点した項目でも今回は通常レベルのサービスとみなして加点しない場合もあります。全体のレベル向上により、相対的に評点が前回より下がる場合もあることをあらかじめご了承ください。
2013年度版の第8回目は、「ニコニコ静画(電子書籍)」をレビューします。前回のレビュー(2012年12月17日)はこちらです。
ラインアップは充実しているか?
「ニコニコ静画(電子書籍)」のWebサイトで、「ジャンル/キーワードから探す」の検索結果一覧から絞り込みジャンル[すべて]を選択すると、[シリーズごとに表示]の状態で2万1339件と表示されます。[すべての本を表示]に切り替えると、7万1118件と表示されました。前回の調査後に「電子書籍(R-18)」コーナーが新設されており、こちらはシリーズ数が7659件、作品数が1万8262件です。
合計すると、シリーズ数2万8998点、作品数8万9380点が配信されています(いずれも2014年2月4日時点)。他の総合電子書店のラインアップは多いところで20万点を超えてきているのに比べると、相対的に見劣りする数字(☆-1.0)です。ただし、前回の調査(2012年12月17日)時から、作品数は5万2607点の増加(約2.4倍)になっています。
また、出版社数は2012年10月17日に公開された配信リストによると当時は100社でしたが、その後リストは更新されておらず、出版社一覧も存在しないため、現在の状況は不明です。
次に、ジャンル別の数字です。シリーズ数は今回の数字のみ(前回の調査時には[シリーズごとに表示]機能がなかった)、作品数は前回の数字と比較をしてみます。
シリーズ数
ジャンル | 2014年2月4日時点 |
---|---|
少年コミック | 2228 |
青年コミック | 4153 |
少女コミック | 3004 |
女性コミック | 5956 |
その他コミック | 55 |
ライトノベル | 1591 |
文芸 | 1908 |
実用・新書 | 1217 |
その他書籍 | 1141 |
コミック雑誌 | 77 |
その他雑誌 | 9 |
R-18コミック | 7659 |
合計 | 28998 |
作品数
ジャンル | 2012年12月14日時点 | 2014年2月4日時点 | 差 |
---|---|---|---|
少年コミック | 9328 | 15168 | 5840 |
青年コミック | 11519 | 20266 | 8747 |
少女コミック | 4614 | 9072 | 4458 |
女性コミック | 4151 | 10726 | 6575 |
その他コミック | 13 | 94 | 81 |
ライトノベル | 2486 | 4915 | 2429 |
文芸 | 1044 | 2941 | 1897 |
実用・新書 | 296 | 1483 | 1187 |
その他書籍 | 3158 | 6294 | 3136 |
コミック雑誌 | 119 | 148 | 29 |
その他雑誌 | 1 | 11 | 10 |
R-18コミック | - | 18262 | 18262 |
合計 | 36729 | 89380 | 52651 |
オープン当初「コミックコンテンツの配信プラットフォームとしては日本最大級」とアピールしていただけあって、その後もコミックやライトノベルのラインアップは順調に増えています。また、R-18コミックのラインアップは他の総合電子書店に比べると多い部類です。
その一方で、「文芸」「実用・新書」「その他書籍」「その他雑誌」といったジャンルの作品はあまり増えておらず、サブカルチャー専門店色を強めています。同じように専門店色が強かった「BOOK☆WALKER」や「eBookJapan」は、既に総合電子書店へ向けて舵を切っており、路線の違いが鮮明になりつつあります。
他方、CGM(Consumer Generated Media)としての「ニコニコ動画」「ニコニコ静画」「ニコニコ静画(マンガ)」「ニコニ・コモンズ」に対する「クリエイター推奨プログラム」や、連載形式で漫画配信(一部有料)を行なっている「ニコニコ漫画(公式)」、有料チャンネル配信ができる「ブロマガ」といった、クリエイター支援体制は健在です。ニコニコ全体として考えると、無料コンテンツから有料コンテンツまで、また、個人の作品から商業作品まで、実にバラエティに富んだラインアップが取りそろえられていることは間違いありません。
評点:☆2.0
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