2011年に半導体大手のIntelがセキュリティ専業のMcAfeeを買収。当時としてはIT業界最大の買収規模であり、また、異色の組み合わせとしても注目を集めた。2社は「ハードウェア支援型セキュリティ」というハードウェアにセキュリティソフト技術に組み込む新たなアプローチを推進している。両社のマーケティング戦略をMcAfee エグゼクティブバイスプレジデント兼最高マーケティング責任者(CMO)のペニー・ボールドウィン氏に聞いた。
今年CMOに就任したボールドウィン氏は、以前に米YahooのCMOや広告代理店の代表職などを歴任した。「Yahoo時代には多種多様なコンテンツやサービスを活用するだけで、日々の生活が素晴らしいものになると考えていました。セキュリティの世界に飛び込んでみて分かったのは、その前提が間違っているということです」とボールドウィン氏は話す。
セキュリティ業界に対する印象は、複雑で非常に技術的であることだったという。「就任から半年ほどですが、セキュリティがより多くの人に受け入れられていくためにはどうすべきかということに、日々取り組んでいます」とのことだ。
2社の「ハードウェア支援型セキュリティ」の取り組みは、製品面ではステルス型のマルウェア対策機構をIntelのチップセットに実装した「McAfee DeepSafe」や、Xeonプロセッサ採用のハードウェアを利用するIPS「Network Security Platform NSシリーズ」などを開発、リリースした。直近ではIntelが、タブレット向けの新型Atomプロセッサのプラットフォームに、McAfeeの統合型セキュリティソフト「McAfee Live Safe」に対応する機能を実装すると発表した。
ハードウェア支援型セキュリティは、ユーザー自身の手でセキュリティ対策を講じなくてはならないという従来型のアプローチにおける負担を軽減させると同時に、セキュリティレベルの向上を支援するという。だが、セキュリティの脅威はますます巧妙化し、対策を講じるべき範囲も広がる一方であるだけに、対策が複雑になれば、ユーザーの負担軽減という目的の達成は難しくなりそうだ。
ボールドウィン氏によれば、こうした点のマーケティング面からの解決方法について、Intel社長に就任したレニー・ジェームズ氏と頻繁に検討を重ねてきたという。
その結果として、例えば、企業向けエンドポイントセキュリティ製品のスイートに、DeepSafeやモバイルセキュリティ管理基盤などの製品を統合した。「多数の複雑なセキュリティ製品の中から必要な製品を選択できるように提供形態をシンプルにしました。マーケティングの観点からユーザーが求める製品構成や価格などは随時見直しを図っているところです」
また、コンシューマ向け製品ではユーザーの意識の高める工夫を製品に取り入れていくという。「例えば、機密ファイルを含んだフォルダ名『Secret』としてしまうようなことがあります。それがいかに危険な行為であるかを、強いメッセージで警告してしまうのではユーザーの意識は高まりません。丁寧な説明を通じて、ユーザーが自然と安全な利用を実践していけるような仕組みが大切でしょう」
ハードウェア支援型セキュリティの技術面での取り組みが進む中、ボールドウィン氏は、ユーザーにそれをより活用していくためのマーケティング面からの施策を推進していくという。
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