SAPジャパンは6月5日、記者およびアナリストに向けてクラウド事業に関する戦略説明会を開催した。同社は昨年来、グローバル全体でモバイル、インメモリ(SAP HANA)とともにクラウドを重要なビジネスの柱に据えている。今年4月にはSAPジャパンにクラウドファースト事業本部を新設し、組織的なサービス強化と営業力向上を図っている。安斎富太郎社長は「今年は特にクラウドを伸ばしていきたい。徹底的に取り組んでいく」と意気込んだ。
なぜ今、SAPはクラウド事業の拡大に舵を切ろうとしているのか。安斎氏は大きく4つの理由を挙げる。1つ目は、クラウドベンダーの米SuccessFactorsと経営統合したこと、2つ目は、B2Bオンラインマーケットプレイスである米Aribaを買収したこと。「クラウドネイティブの会社のDNAと、かつてのオンプレミスサービスからクラウドサービスに生まれ変わった会社のDNAをSAPは併せ持つことになったのだ」と安斎氏は述べる。
3つ目は、単一でオープンなプラットフォームを提供できることだという。これは先月発表した「SAP HANA Cloud Platform」のことを指す。SAPはこのPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)上に、SuccessFactorsやAribaのソリューションや、中堅企業向け業務アプリケーションパッケージ「SAP Business ByDesign」、会計パッケージ「SAP Cloud for Financials」など、同社のあらゆるクラウドサービスを搭載していく予定である。
4つ目は、同社が創業時から提唱する「リアルタイム経営」を顧客が実現するために、クラウドは必要不可欠だということである。
「こうした要素を兼ね備えているのは、現時点ではSAPだけである。既にユーザーも全世界で2900万人を超えている。まさにクラウドを推進すべき会社に変わったのだ」(安斎氏)
企業規模は関係ない
では、クラウド事業をさらに成長させるための具体的な戦略とは何か。同社 バイスプレジデントでクラウドファースト事業本部長の馬場渉氏は、これまで同社がとってきた戦略との違いを説明する。
まず、対象企業規模について、今までは主に中堅・中小企業に向けたクラウドサービスを提供していたが、今後はすべての企業規模がターゲットになる。提供地域については、新興国中心だったのを日本を含む全地域にする。
営業提案に関しては、これまで顧客企業の全体最適を前提に考えていたため、例えば、5年に1度のシステム刷新に合わせて提案するようなスタイルだった。しかし、ビジネス環境が急激に変化する中、これではスピード感が出ない、部門ごとに対応できないなどの課題があったため、クラウドサービスの個々の機能を部門ごとに提供するような個別最適を重視する。導入形態についても顧客企業それぞれのニーズに合わせてアプローチを変えていくとした。
関連記事
- SAPPHIRE NOW Orlando 2013 Report:10年の時を超えてクラウド基盤になったHANA
最終日となった「SAPPHIRE NOW Orlando 2013」の基調講演には、SAPの共同創設者であるハッソ・プラットナー氏が登壇した。 - SAPPHIRE NOW Orlando 2013 Report:“インメモリ×クラウド”が世界にもたらす価値
2日目を迎えたSAPの年次カンファレンスは、新たなクラウドサービスや、先進的なクラウドユーザー事例が紹介された。 - 「2013年はクラウドに火をつける」 SAPジャパンが事業戦略を発表
SAPジャパンの安斎社長は2013年の注力事業について説明した。 - 「SAP HANA」をAWSのオプションとして提供
Copyright© 2013 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.