実は今回、ウェアラブル端末の動向に関するコラムを書きかけていたのだが、そんなところに入ってきたのが、ソニーがテレビ部門を分社化するというニュース。他社に売却されるVAIO部門のインパクトが強く、あまりテレビ事業部にはスポットが当てられていないが、「テレビはどうなるの?」という読者も多いことだろう。
ソニーは、現在の平井和夫社長体制になってから、エレクトロニクス事業を立て直すコア事業として「イメージング」「モバイル」「ゲーム」の3分野を選んでいた。すなわちテレビ部門はコア事業ではないということになる。
一方で平井氏は、ソニーが映像や音響に関する技術を持ち、プレミアムな価値を持つ製品があり、ユーザーにより良い“原体験”を提供してきたからこそ、世界で通用するブランドになったのだとも話している。そのためテレビに関しては、可能な限り早く止血(すなわち赤字解消)して、コア事業として稼げる体制にならなくても、”より良い原体験をもたらすソニー製品”の1つとして事業継続を模索してきた。
ここ数年は、組織をスリム化し、シェアを極端に追うことなくプレミアム製品にフォーカスした製品展開を行ってきた。しかし、さまざまな要因で赤字解消を狙っていた前四半期(2013年10〜12月)も黒字化は達成できず……という流れだ。本コラムは経済誌向けのものではないので、これ以上は深く掘り下げないことにする。
では、なぜVAIO部門は売却され、テレビ部門は100%小会社として残ったのか。それは平井氏のエレクトロニクス事業再建のためにテレビが必要だったからにほかならない。テレビが再び稼げる部門に成長する見込みがあるから……というよりも、テレビを含めた映像エンターテイメントを作っていかなければ、平井氏のいうソニーに内在する「五感に訴える感性を呼び起こす技術とノウハウ」を生かした事業戦略に大きな修正が必要になってしまう。
ソニー内部から聞いた話によると、VAIO事業売却は昨年末を決め、年末には大筋の話を日本産業パートナーズと話してきたとのことだ。テレビ部門に関しても、年末商戦の動向を判断した上で、昨年末から今年の「International CES 2014」前までに方針が決められた可能性が高い。
そのCESにおけるブース展示や平井社長による基調講演などを振り返ってみると、4Kのトレンドを中心として、高付加価値の映像体験をソニーブランドで提供するという基本方針に変化はないと考えるべきだろう。今後、極端な不調に陥ったり、グループ内の存在意義が問われる位置になってくると(分社化されることで)事業整理がやりやすくなるかもしれないが、一方で意思決定の速度や製品ラインアップに良い影響を与えるようになるかもしれない。
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