電車に乗ると、フィーチャーフォン(従来のケータイ)を使っている人を見かける方が珍しくなってきたといえるほど、スマートフォンの普及が進んでいる。電車中で見かけるスマホユーザーは、高校生から大学生、社会人、シニアの方々までさまざまで、属性によって使い方や、スマホへの趣味嗜好も変わってくる。筆者(男)はこういった仕事をしているので、スマートフォンはそれなりに活用しているが、スマホ使いの中でも特に自分と縁遠い存在が“女子高生”だと思っている。
今どきの女子高生は、スマホをどのように活用しているのだろうか? 今回、現役女子高生にして起業家でもある椎木里佳さんに話を聞いてみたので、ちょっとだけ彼女たちのスマホ事情をのぞいてみたい。なお、今回聞いた話は椎木さんとその周囲の場合であり、女子高生全般に当てはまるものとは限らないことをご理解いただきたい。
椎木さんは、1997年11月生まれで都内の私立高校(女子高)に通う1年生。中学3年生のときに株式会社AMFを創業し、“かわいいを社会に発信を”をテーマに活動している。女子高生を中心とした10代向けスマホブログ「Candy」では編集長を務め、その関連で「JKめざまし」アプリをプロデュースしたこともある。
ガラケーを使っているのは50人中2人くらい
椎木さんの友だちは、ほぼ100%がスマホユーザーで、「ガラケー(フィーチャーフォン)は50人中2人くらいしかいない」そうだ。特に、2012〜2013年にかけて、友だちがスマートフォンに替え始めたそうだ。
女子高生はスマホをどう活用しているのか。「スマホには引力があるんだと思います」という言葉が印象的だったが、「暇つぶしというか、何かをするためでなく、ただ日常的にスマホに触れている人が多い」(椎木さん)という。このあたりの感覚は筆者も分かるが、例えば「ドラクエをする」「電子書籍を読む」といった明確な目的を持ってスマホに触れている人は、女子高生には少ないのかもしれない。「触らなくてもいいけど、触らないとソワソワする。依存というほどでもないけど……。私もそんな感じです(笑)」(椎木さん)
男子高校生は、「パズドラ(パズル&ドラゴンズ)」をはじめとするゲームに夢中になっている人が多いそうだが、「私たちはあまり……」と椎木さん。「パズドラは、やり方があまり分からなくて。男子はすごいやっていますよ。中学のときは、後ろの席の男子はみんなやっていました。授業中に『やったー!』とか叫んで先生に怒られたりしていました(笑)」
キャリアメールを使ったことがない人もいる
椎木さんも含め、周りで最も使われているスマートフォンのアプリは、やはりというか何というか「LINE」で、友人たちとの連絡手段にはもっぱら使われている。一昔前までは「キャリアメール」が連絡手段の主流だったが、椎木さん世代の10代は「キャリアメールを使ったことのない人が多い」そうだ。椎木さんも仕事ではキャリアメールを使うが、「仕事をしていなかったら使っていないでしょうね」と話す。
「グループチャットは普通に使っている」そうで、椎木さんはなんと54個ものグループに属している。54個も? と驚いたところ、さらっと「普通ですよ」との反応。「学校の中でも、例えばクラスで違うグループに分かれていたり、中学が同じクラスの人だったり、『いつメン(いつものメンバー:いつも一緒にいる友人たち)』だったり……」とさまざまだ。
椎木さんはLINEでは309人とつながっていて、やり取りするメッセージは1日15通ほどだそう。「そりゃ女子高生起業家だったら、たくさんの人とつながっているでしょう」と思ったが、仕事関係でつながっている人はLINEにほとんどおらず、小中高で一緒だった友だちが多いそうだ。309人も大した数だが、「これでも絞った方です」だそうで。
LINEを使う一番の理由は「既読」機能
LINEが人気なのは、フキダシ型で会話の流れが見やすいこと、画像をスムーズに送れること、リアルタイムでメッセージをやり取りできることなど。これだけならキャリアメールと大差はないが、椎木さんがLINEを使う理由で「一番大きい」と言うのが「既読」機能だ。LINEでは、送信したメッセージを相手が開くと、メッセージのフキダシの横に「既読」という文字が付き、相手が自分のメッセージを読んだかどうかが一目で分かる。やはり「相手が読んだか」はとても気になるようで、「LINEに既読機能がなかったら、それほど使っていないと思います」(椎木さん)と言うほどだ。
便利な既読機能だが、新たに「既読スルー」という問題も生んだ。既読スルーとは、相手がメッセージを読んだのにもかかわらず、返信が来ないことを指すもので、「KS」などとも呼ばれる(厳密に言えば「KT」だろうが……)。この既読スルーが原因でLINE仲間とトラブルになるといった話もちらほら聞く。ただ椎木さんの周りでは、既読スルーで仲が悪くなるほどの事態になったことはないようだ。
「質問に無視されたら『あれ?』と思いますけど、『うん』という軽い返事やスタンプだけのメッセージなら、『これは返さなくていいだろう』という感じになります。話の流れによりますね」(椎木さん)
一方で、この「あれ?」というわずかな出来事が積み重なると、ドロドロした人間関係になってしまう危険性はありそうだ。
有料スタンプよりも食事や洋服が大事
LINEといえばスタンプのイメージが強いが、椎木さんの周りでは、意外にも有料スタンプを購入している人はあまりいないそうだ。社会人ともなると、懐かしのキャラクターや好きなマンガのキャラクターがスタンプで配信されていると、ノリで買ってしまうこともあるだろうが、自由に使えるお金が少ない高校生は、事情が違うようだ。また、アプリも基本的にすべて無料のものを使っている。
「例えば、洋服や食べ物に400円出すのと、アプリやスタンプに400円出すのでは価値が違うと思っている人が多い」と椎木さんは話す。多くの女子高生にとっては、スタンプやアプリよりも、洋服や食べ物の方が価値が高いようだ。「スタンプは90円くらいでも悩みますし、周りではそういう人がほとんどです。1つや2つ、気に入ったスタンプを買うことはありますけど、『スタンプを買いすぎちゃった』と言っている人はいないですね」
キャリアの音声回線を用いる電話は、椎木さんの場合、父親や母親とすることは多いが、友だちとはLINEで通話をしているそうだ。「(LINEの通話は)外出先だと途切れてしまうことが多いですが、通話料がかかるよりはマシかな」と割り切っている。
Facebookは冷めてしまった
Facebookは「1〜2年前の中学時代の方が盛り上がっていましたけど、今は冷めちゃいました」と椎木さん。その理由は「あの子、写真アップしすぎじゃない?」「リア充自慢ウザい」など、陰口をたたかれるのに嫌気がさしてしまったからだそうだ。
Twitterはコミュニケーションというよりは、情報収集で活用している人が多い。学校のリア友(リアルの友だち)用のアカウントとは別に、好きな芸能人だけをフォローする趣味用のアカウントを活用して、同じ趣味仲間と情報交換をする人もいるそうだ。
ちなみにmixiについては「かけ離れている世代」と言い、椎木さんは一度も使ったことがないそうだ。
「カメラロールに6000〜7000枚くらい写真があるのは当たり前」と椎木さんが話すように、「カメラ」も使用頻度の高い機能だ。画像加工系のアプリも人気を集めており、椎木さんは「DECOPIC」「LINEカメラ」「プリ画像」を活用している。
断トツでiPhoneユーザーが多い
使用しているスマートフォンは、「断トツでiPhoneが多いです」と椎木さんは言い切る。2013年第4四半期の日本におけるスマートフォンのシェアはiOSが68.7%となるなど、日本でもiPhoneの比率は高いが、椎木さんの周りでは、iPhoneとその他(Android)の比率は9:1ほどまで広がっているそうだ。「Xperia」や「GALAXY S」といったAndroidの有名ブランド名を出しても「知らない人が多い」というほどAndroidは認知されていない。
iPhoneがここまで人気を得ているのは「なんか格好いいから」(椎木さん)というほかに、「カバーが豊富なのが一番大きいかもしれません」と話す。椎木さんの周りでiPhoneを裸で使っている人はいないそうで、皆、個性を出すべくカバーを装着しているという。ケータイ時代は、ストラップを付けたり、端末にシールやプリクラを貼ったりする若者が多かったが、スマホ時代では、それがケースに取って代わったのだろう。
人気のカバーは「自分が好きなキャラクターや、デザインがいいもの、落としたくないからブックスタイルのものにしている人もいる」などさまざま。1つのカバーを長く使うよりも、「3カ月に1回変えている」という人が多いそうだ。椎木さんも「今は半年に1回くらいのペースに落ち着いていますけど、1日おきにカバーを変えていたこともありました」と話す。
「2000円くらいが多い」(椎木さん)というカバーの価格も、高校生にとってはそれなりの額だが、彼女たちにとっては、アプリやスタンプよりも、オシャレを演出できるカバーの方が、お金を出す価値があるのだろう。
使用機種はiPhoneで、ケースは欠かせない。連絡手段はもっぱらLINE。よく使う機能はカメラで、撮った写真は無料アプリでデコっている。有料アプリやスタンプは滅多に買わない——。椎木さんの取材からは、そんな女子高生のスマホユーザー像が浮かんできたが、コミュニケーションとファッションの重要なアイテムになるという本質的なところは、ケータイもスマホもそれほど変わらないのかもしれない。
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