半径300メートルのIT:橋下市長、突然の「プリキュア」——その裏にあるセキュリティ危機
大阪の橋下徹市長のiPhoneを操作して、小学生の娘さんが「スマイルプリキュア」とツイート。仲の良い父と娘のほのぼの話、では片付けられない危機がそこには隠れています。
大阪市の橋下徹市長が、突然「スマイルプリキュア」とツイート(参照リンク)をしたのをご存じでしょうか。
実はこの発言、小学校1年の娘さんがパスコードを使って橋下市長のiPhoneにログイン、Twitterに投稿したというものでした。あまりに突然で異色なツイートを、父と娘のほのぼの話として、おもしろおかしくとりあげた記事/ブログも多数ありました。
しかし、これを「セキュリティ」の観点でみると、それほど愉快なお話ではないのです。
AP通信の一言で株価が急落?
2013年4月23日、AP通信が「ホワイトハウスで爆発、オバマ大統領が負傷」という“情報”を速報でTwitterに流しました(参考記事)。もちろんこれは事実ではなく、AP通信のTwitterアカウントがハッキングされた結果です。
しかし、これだけではこの話は終わりません。このニセ情報がきっかけで、同日の米株式市場ではダウ平均株価が急落します。米国の投資家は、ネット上のさまざまな情報ソースを基に株を売買する「アルゴリズム取引」を行っています。一説によるとこのツイートがトリガーとなり、一瞬にしてアルゴリズム取引が発動し、株価が下落(参照リンク)。たった1つのツイートで市場が荒れてしまいました。
今回の橋下市長の一件は、AP通信の誤報ツイートほど大きな影響をもたらすものではありませんでした。しかし、ソーシャルネットワーク(SNS)上の発言は多方面にさまざまな影響を及ぼします。
モバイル端末のユーザー自身が使い方に気を使えばいいこと——そういう心構えの人はいませんか。でも、SNSにログインしたままのモバイル端末を自分以外の誰かが使うという可能性が残っていること自体が非常に危険な状態なのです。
「公人だから気をつけろ」ではすまない話
iPhoneなどのモバイル端末は、個人情報の宝庫ともいえます。端末の自動ロックやパスコードの設定が重要なのはいうまでもありませんし、パスコードは家族であっても共有すべきではありません。
今回、橋下市長はパスコードを変更したとのことですが、変更後のパスコードを橋下夫人に報告しているそうです(参照リンク)。なぜ、このような「事件」を起こしているのに、穴を残すのでしょうか……。
今回の「プリキュア」ツイートは、橋下市長のiPhoneとTwitterのアカウントが、娘さんに乗っ取られた結果、発生したというと大げさに聞こえますが、セキュリティの観点からみれば、ほかに言いようがありません。
例えば、取引先の相手に電話をかけたり、メールをしたりするときに、個人所有のスマートフォンを使う場面もあると思います。今後、個人が所有するモバイル端末を会社の業務でも使う「BYOD(Bring Your Own Device:私的デバイスの活用)」の範囲はさらに広がるでしょう。こうなったときに、「娘にiPhoneを使わせていたら、情報がダダ漏れになりました」では目も当てられません。
家族と共有するタブレット端末なら、マルチユーザー機能を
とはいえ、特にタブレット端末ですと1台を家族で共有することも多いと思います。この場合、Android 4.2で用意された「マルチユーザー」機能を使って、PCと同じようにログインしたユーザーごとに環境を分けることが望ましいでしょう。
残念ながら、iPad(iOS)にはマルチユーザー機能がまだありませんし、Android 4.2搭載機種もまだ普及しているとは言いがたいのが現状です。どうしても子供にも使わせたいのであれば、専用タブレットを用意してあげるのが次善策となります。そのときには、ネットのマナーや危険さをしっかり教えてあげてください。
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