NTTドコモは1月31日、2014年3月期第3四半期の決算を発表した。営業収益は前年同期比0.2%減の3兆3636億円、営業利益は同1.9%減の6887億円。スマホ普及による端末販売収入とパケット収入の増加があったものの、端末購入費用を補助する月々サポートの影響で減収減益となった。なお、同3.3%増の4302億円を純利益として確保している。
ドコモは2013年9月にiPhone 5s/5cを発売したが、当初の在庫不足や販売チャネルの制限などが響き、短期的には業績への大きな影響は与えなかった。また「dマーケット」などの対応するキャリアサービスのiPhone提供が遅れたことで、一時的なユーザーの減少もあったという。ドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は同日行なわれた決算会見で、「9月が思ったほど良くなかったのは事実。(iPhone投入の準備が)もう1カ月前倒しできれば違っていたかもしれない」と振り返った。ただし、iPhone投入の効果が徐々に出てきており、極めて重要な存在であると改めて説明した。
iPhone 5s/5c発売直後の2013年9月に純減を記録したドコモの月間契約者数だが、その後反転して、12月度は3キャリアの純増シェア1位を約2年ぶりに獲得。3Q全体では純増数が前年同期の約2倍まで伸びるなど、iPhoneの販売体制が整うに連れて回復してきた。またMNPによる転入実績も月を追うごとに3割ずつ改善。同時に解約率も大幅な低下傾向にある。加藤氏は「転出超過の解消は高い目標だが、それが視野に入ってきた」とiPhoneの効果を強調した。
3Qまでの累計端末総販売数は1607万台で前年同期から8.6%ダウン。しかし、スマートフォン販売台数は同1.8%増の987万台となり、販売比率も同55%から61%へと増加した。ドコモ全体のスマートフォン利用数は2278万契約で、LTE対応モデルの比率は73%。LTEの契約者も1902万と着実に増え、年度末には2500万契約を見込んでいる。
加藤氏は「今度の春商戦は、ドコモがiPhoneを手にして初めて臨む商戦期で非常に重要だ。この勢いに乗って思い切り戦いたい」と意気込む。春商戦への取り組みでは、世界的な人気音楽グループのOne Direction(ワン・ダイレクション)を起用して若年層とその家族に「学割」を訴求。さらに、800MHz/1.5GHz/2GHz帯に1.7GHz帯を加えたクアッドバンドLTEによるエリア展開も進め、下り150Mbpsの高速通信サービスもアピールする。
エリア強化の要でもあるLTE対応基地局の倍増計画も順調で、対応基地局は年度末までに計画を上回る5万2000局を設置する見込み。さらに、全国の新幹線駅と大学の主要キャンパスはLTEによるカバレッジが100%に、また大型集客施設の96%をカバーした。
そして3月下旬からは、海外でもLTEが利用できる国際ローミングを開始する。対応機種はiPhone 5s/5cと、AQUOS PHONE ZETA SH-01F/ARROWS NX F-01F/Xperia Z1 f SO-02F/GALAXY Note 3 SC-01FなどのAndroidスマートフォン、モバイルWi-Fiルーターなどの合計12機種からスタートする。
スマホ普及で音声通話の利用減少 成長鈍化で「Tizen」も見送り
ドコモの顧客基盤がスマホ化・LTE化すると同時に、パケットARPUとスマートARPU(dマーケットなどスマホ向けのコンテンツ売上も含めた収入)は増加している。一方、音声ARPUとMOU(1契約あたりの月間平均通話時間)が低下するなど、音声通話サービスの利用低下が目立ってきた。
LTE対応の料金については、ソフトバンクが1月24日に“VoLTE”対応をうたう定額通話とパケット定額のパック料金を発表した。この新料金について感想を求められた加藤氏は「大変工夫しているな、という印象」と答え、追従するのかという問いには、「我々も料金はいろいろな側面から知恵を出しているが、にわかには対抗しない」とコメントした。ただし、「音声ARPUとMOUが低下しており、音声通話の生かし方については課題がある。音声通話はコミュニケーションの基本であり、VoLTEがその見直しの契機になればとは思う。そうなれば、通話定額やパック料金の投入もありうる」と、将来的な通話定額の導入に含みを持たせた。
スマホ移行が進む中で、市場の飽和を示すサインも現れている。加藤氏は2013年度中の発表を予定していた「Tizen」搭載スマホの投入見送りについての質問に、「iPhoneの存在もあるが、マーケットは鈍化しつつある。こうした市場状況もあり、本年度は見送る決断をした。しかしTizenは重要なOSであり、我々にはTizen Associationの中心的な役割もある。世界の動向をみながら、投入のタイミングをきっちり考えていきたい」とコメントした。
またスマートフォンの販売比率が向上する一方で、「フィーチャーフォンからスマートフォンへの機種変更が減ってきている」(加藤氏)ことも明かした。
関連記事
- ソフトバンクが他社に先駆けて「音声定額」を導入——他社と消費者の反応を伺う「様子見」リリースか?
4月21日から通話定額とパケット定額をパックにした4Gスマホ向け新料金プランを導入することを表明したソフトバンク。ユーザーにとってお得なのか? 同プランの狙いを考えてみた。 - ドコモの影響はそれほどでもなかった──KDDI、2014年3月期第3四半期決算
KDDIは、1月30日に2014年3月期第3四半期決算を発表。ほとんどの指標で予想を上回る実績をあげている。 - ドコモ、2014年度中にグループを再編——新領域と法人営業を強化
ドコモの加藤社長は、2014年度中にもグループ25社を再編する方針を示した。スマートフォン上で利用するサービスと法人向け営業を強化するため、意思決定の迅速化と事業の効率化を図る。 - 新iPadのインパクト/auスマパス強化の狙い/iPhone効果が現れたドコモ
各社の冬モデル発売が相次ぐ中、Appleが「iPad Air」と「iPad mini Retinaディスプレイモデル」を発表。これら2機種はどれだけのインパクトがあるのか。このほか、KDDIが発表したauスマートパスの新戦略や、ドコモの決算会見について取り上げる。 - 純増は苦戦:ドコモ、「Xperia A」を110万台販売——ツートップはスマホ移行に効果あり
ドコモが2014年3月期第1四半期の決算を発表。ツートップの「Xperia A」を110万台、「GALAXY S4」を55万台販売したことを明らかにした。純増は苦戦したが既存ユーザーのスマホ移行が進んだという。
関連リンク
Copyright© 2014 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.