今年も、年始恒例の「2014 International CES」が米国ネバダ州のラスベガスで開催された。世界最大級のコンシューマーエレクトロニクスショーでは、数多くの新製品とともに業界の方向性も見えてくる。今回もAV評論家・麻倉怜士氏に詳細を聞いていこう。
——今年のCESはいかがでしたか?
麻倉氏: 今年もいくつかのトレンドが見えてきました。その1つは、テレビのフォームファクター(形状)において、新しい傾向が見えたことです。韓国メーカーは湾曲した画面のテレビをプッシュしていますが、今年の展示会場にはより大きな画面とカーブド(湾曲)の製品がかなり増えましたね。また、21:9のアスペクト比を持つシネスコサイズ(ほぼ2:1)のテレビも複数のブースでみることができました。
もう1つは、4Kテレビでは単に高精細なパネルを使うだけではなく、そこに映し出す映像——つまり画質に力を入れる動きです。例えば米Dolbyが発表した「ドルビービジョン」などが挙げられるでしょう。まずは、米国における4Kテレビとコンテンツの現状を報告したいと思います。
——米国市場で4Kテレビは売れているのでしょうか
麻倉氏: CESを主催するCEA(Consumer Electronics Association、全米家電協会)によると、2013年に米国で出荷された4Kテレビは5万7000台だったそうですが、2014年には48万台、2017年には290万台と右肩上がりで増えていくと予想しています。米国のテレビ出荷台数は年間およそ3000万台なので、3年後には市場の1割を4Kテレビが占めるとみているわけです。
理由を尋ねると、大画面化が進んでいることを挙げました。米国では1998年には22インチの画面が中心でしたが、2013年は46インチにまで拡大しています。また買い増し需要も根強く、一家に2台、3台のテレビがあるケースも少なくありません。
——4K放送へ向けたロードマップはできているのですか?
麻倉氏: 日本では官民一体となって4K/8Kを推進しようとしていますが、米国の場合は放送局は独立独歩です。CES取材の後、ロサンゼルスのCBSスタジオに4Kの話を聞きに行きましたが、実験こそ実施しているものの、現状でほとんど動きはありませんでした。
しかし、米国では代わりにネット配信サービスが元気です。NetflixやAmazonのインスタントビデオ、DirecTV、ESPN、YouTubeが4K動画配信に手を挙げ、メーカーも歓迎しています。実際、CESの展示会場ではあちこちでネット配信事業者の重役に遭遇しました。開幕前日のプレスデー(1日中、メーカーの記者発表会が催される)などは、朝のLGも、夜のソニーもNetflixのCEO、Reed Hasting(リード・ヘイスティング)氏が出演していました。同社は昨年、サムスンだけと配信契約を交わしていたのですが、今年は各メーカーに拡大する方針で、当日はスター並みの忙しさだったようです。
このような状況になった背景には、新しい映像符号化方式のHEVCが規格化され、ストリーミングで4K動画が視聴できる環境が整いつつあることが挙げられます。しかし、米国のネット環境は日本ほどブロードバンドインフラが普及しているわけではありません。4K配信では16Mbps程度のビットレートを想定しているそうですが、果たしてうまくいくのでしょうか。また米国はCATVでテレビを視聴している世帯が多いので、次はケーブルテレビ会社がどう動くかが課題です。ともあれ、インフラありきの日本に対し、米国ではコンテンツを軸に4K化が進んでいる印象を受けました。
4Kテレビにさらなる付加価値を
麻倉氏: 4K化は、大画面テレビを購入する人たちのモチベーションになっています。しかし、4Kだけでは魅力が足りないとして、さらに付加価値を加えたいと考えるメーカーも多いようです。その1つが前述の湾曲(カーブド)したテレビ。韓国のLGとサムスンが仕掛け、昨年のIFAからショーに登場し始めましたが、今回のCESではカーブドの展示機が本当に増えました。展示の目玉になったといっても過言ではありません。
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