日本の隣りに位置する台湾の人口はおよそ2300万人、その面積は3万6千km2で九州とほぼ同じ面積です。筆者は個人的な事情から、台湾人の友人が数多くいます。そうした中で、長らく台湾の製造業に興味を持っていました。東南アジアの製造業を訪問していると、時々、聞きなれない名前の巨大企業・工場に遭遇することがあります。一体、どこの国の企業なのかと思ったら、「台湾企業」ということが多々あるのです。
考えてみれば、Foxconn(関連記事:「iPhoneを製造するフォックスコンは、生産技術力をどこで身に付けたのか?」)を始め、台湾企業は電気・電子機器の受託製造サービスという、まさに「モノづくり」そのものの分野で、巨大な存在感を有しています。また、語学的な共通性から、中国市場にも積極的に事業を展開しています。その結果、ノートPCの生産は台湾企業が9割の世界シェアを有し、タブレットも世界生産シェア5割を占めます。こうした台湾企業がどのような歴史をたどり、発展してきたのか、それが筆者の最近の興味・関心の1つなのです。
筆者は2013年から台湾企業の訪問を始めています。そこで、目にしたのは台湾企業におけるグローバル化と日本のモノづくりとのつながりです。そして、台湾独特ともいえるホスピタリティー(おもてなし、歓待の精神)でした。
1.グローバル化を推進する台湾企業
台湾の桃園にあるMechema Chemicals(美●(王偏に其)罹瑪國際、従業員数120人)はポリエステル繊維やペットボトルの原料となるPTA触媒、カソード物質といった化学製品を生産し、とくにPTA触媒では世界市場でトップシェアを誇ります。Mechemaの前身は英国企業Mechema UKの台湾現地法人でした。しかし、経営危機が生じ、Mechema UKはアジア市場からの撤退を決定します。現社長は当時、ある貿易会社の代表として、Mechema UKの製品を扱っていました。アジアでの潜在的な市場性を見抜き、Mechema UKを買収し、そのブランドを引き継ぐことを決断。1992年のことでした。
台湾市場が小さかったこともあり、Mechemaはタイ、インドネシア、韓国、中国工場、サウジアラビア工場、マレーシア工場と積極的にグローバル展開していきます。Mechemaでは1人のマーケティング担当者がマレーシア、韓国、日本、シンガポールを統括するなど、守備範囲は広くなっています。また、その全員が国際関係学などの修士号の取得者だそうです。
台湾は国内市場が小さいこともあり、Mechemaのように早期に国際化する企業が多々、存在します。台湾企業を訪問するにつれ、感じ始めたことがあります。それは、台湾のモノづくり企業の中に息づく「日本」の存在でした。
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