NTTドコモが英断を下した。「Tizen (タイゼン)」のことだ。
NTTドコモは1月16日、2013年度内に予定していたTizen OSを搭載するスマートフォンの導入を当面見送ることに決めたと発表した(参考記事)。同社では「モバイル市場を取り巻く環境の変化に鑑み、当面見送ることにした」(広報部)としている。
しかし、NTTドコモが当初、Tizen OS搭載のスマートフォンを発売する予定だったのは2013年の初秋である(参考記事)。関係者の話を総合すると、9月末から10月上旬あたりが当初の発売時期だった。それが2014年1月に延期されて、今回、再延期で「当面見送り」になった。スマートフォンの開発サイクルがとても短いことを鑑みると、いま開発中のTizenスマートフォンが日の目を見る可能性は著しく低くなった。そして、このタイミングで2度目の無期限延期を決めたことは、NTTドコモがTizenに対する戦略を、プロジェクトの撤退や縮小も視野に入れ、抜本的に見直すことを意味する。
筆者はNTTドコモが今回、Tizenスマートフォンの販売を延期し、プロジェクトそのものの見直しを図ったことは正しいと考えている。英断、といってもいいだろう。その理由について、Tizenのこれまでを振り返りながら述べていきたい。
「反Apple・反Google」という思惑から始まったTizen
そもそもTizenとは何か。
Tizenとは、Appleの「iOS」やGoogleの「Android」に対抗するOS (基本ソフト)である。スマートフォンやタブレット、スマートテレビ、PCといった各種スマートデバイスへの搭載を目指し、IT業界の主導権がAppleとGoogleに寡占化する流れに反する"第3勢力"となることを目指していた。
参加メンバーもそうそうたる顔ぶれだ。開発・普及を推進するTizen Associationには、NTTドコモやサムスン電子、インテル、仏通信キャリアのOrangeなどが名を連ねている。2013年2月に筆者はTizen Associationがバルセロナで開催した関係者・プレス向けのレセプションに参加したが、その様子はまさに「AppleとGoogleの二大帝国による支配に反旗を翻す、諸国連合の決起集会」といった雰囲気だった。
→Mobile World Congress 2013:NTTドコモ、今秋にもTizenスマホを発売へ——端末上でdマーケットのサービスも展開
実際、Tizenの設計思想には「反Apple、反Google」の色が濃厚だ。Tizenはメーカーや通信キャリアが自由にカスタマイズして使うことができる。AppleやGoogleのクラウドサービスが必須ではなく、アプリやコンテンツの流通もApple・Google"抜き"で行える。代わりにメーカーや通信キャリアが、OSごとユーザーとの接点を押さえることができるのだ。
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