電力会社は景気の回復によって販売量が伸びることに期待をかけているが、残念ながら需要が戻ることはない。記録的な猛暑だった2013年の夏の結果を見れば明らかだ。前年よりも景気が良くなり、連日のように最高気温が上回ったにもかかわらず、電力の販売量は微増にとどまった。4月〜9月の上期を合計すると、前年から1%の減少である。
東日本大震災をきっかけに全国各地で節電対策が進み、電気料金の相次ぐ値上げが需要の減少を促進した。実際に2011年度の下期から、電力の販売量は前年を下回り続けている(図1)。
今後も電気機器の消費電力が減る一方、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーやガスコージェネレーションなどの代替エネルギーの利用量が増えていくことは確実で、再び電力需要が増加に転じる要因は見あたらない。
そして迎えた2014年は企業や家庭の節電対策が新しいフェーズに入って、さらに電力の使用量は少なくなっていく。その原動力になるのはスマートメーターとデマンドレスポンスの広がりだ。企業や家庭の電力使用量を時間ごとに調整して、無駄な電力を使わずに効率的な節電対策を実行できるようになる。
いよいよ家庭にもスマートメーターを導入開始
もともとスマートメーターは電力会社が自動検針を目的に企業や家庭に設置を進めているものである。従来は人手によって月単位でしか電力の使用量を把握できなかったのに対して、スマートメーターではリアルタイムに使用量を計測して、30分単位のデータを即時に集計することができる(図2)。
スマートメーターのデータは電力会社に送られるだけではなく、企業や家庭にも提供する。BEMS/HEMS(ビル/家庭向けエネルギー管理システム)のような仕組みがあれば、毎日の使用量をグラフで確認しながら、状況に応じて適切な節電対策をとることが可能になる。BEMS/HEMSで電気機器を自動的にコントロールして使用量を抑えることも簡単に実施できる。
すでに電力会社は企業を中心にスマートメーターを設置済みで、2014年からは家庭にも本格的に導入を開始する(図3)。最も早く全顧客に設置するのは東京電力で、当初の予定を3年も前倒しして2020年までに完了する計画だ。他の電力会社も追随して導入計画を早めることは間違いない。
従来の節電対策は空調や照明などの機器単位で、電力の使用量を抑える方法が中心だった。今後はスマートメーターからのデータをもとに、企業全体や家庭全体で効率的な電力の利用が可能になる。しかもシステムを使って自動化できるために、面倒な手間が少なく、より広範囲に節電対策が浸透していく。地域全体で見ても電力の使用量は減っていく。
2014年は「デマンドレスポンス元年」
スマートメーターの普及に合わせて、電力のピークを抑えるための新しい節電対策が広がっていく。地域内の企業や家庭が協力して使用量を抑制するデマンドレスポンスの取り組みだ。スマートメーターを利用すればデマンドレスポンスも実行しやすくなる。
夏の昼間のように一時的に電力需要が急増すると、電力会社の発電設備の状況によっては供給が追いつかなくなる心配がある。最悪の場合には停電を引き起こすことになり、それを避けるために電力会社は発電設備を余剰に確保している。
電力のピークを常に一定の水準以下に抑えることができれば、電力会社の発電設備を縮小してコストを削減することが可能になり、電気料金を引き下げることにもつながる。デマンドレスポンスが注目される大きな理由である。
デマンドレスポンスの実施方法はいくつかあるが、通常はアグリゲータと呼ぶ事業者が介在して、電力会社が必要とする節電量を多数の利用者から集める(図4)。協力した利用者に対しては電気料金の割引などの報酬が与えられる仕組みだ。
この一連の流れは企業や家庭にスマートメーターが設置されて、さらにBEMS/HEMSなどの管理システムが電力の使用量をもとに機器を自動制御できると実現しやすい。
2014年の夏には、東京電力が関与するデマンドレスポンスのプロジェクトだけでも6種類が予定されている。実施方法や対象地域を分けて効果を検証しながら、今後のスマートメーターの普及に伴って範囲を拡大していく方向だ。
2014年は「デマンドレスポンス元年」とも言える環境が整いつつある。東京以外の地域でも電力会社や小売事業者がデマンドレスポンスのプログラムを展開して、進化した節電対策が全国各地に浸透し始める年になる。
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