2013年のモバイル業界は、ついにNTTドコモからiPhoneが発売され、NECカシオモバイルコミュニケーションズとパナソニック モバイルコミュニケーションズがスマートフォン事業から撤退、イー・アクセスとウィルコムの合併が決まるなど、動きの多い1年だった。
新機種の数は2011〜12年よりも絞られたが、「うおお!(今風に言うなら『じぇじぇじぇ!』か)」と感動したスマートフォンは、ケータイが主流のころと比べて少なくなったように思う。その形状のほとんどがストレート型で、デザインも似たり寄ったり……となると仕方のないことかもしれない。そんな中でも、2013年に筆者が「うおお!」と思ったスマートフォンを紹介したい。
“ガラスの一枚板”を思わせるデザインが秀逸だったXperia Z
まず取り上げたいのが、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia Z」だ。Xperiaはソニーモバイルを代表するスマートフォンであり、これまでも弧を描くデザインの「Xperia arc」、小型の「Xperia ray」、透明パネル(Floating Prism)の「Xperia NX」など、ほかのスマートフォンとはひと味違うデザインで注目を集めてきた。一方で2012年後半に登場した「Xperia GX」と「Xperia AX」は過去のアークデザインを継承したもので、新鮮さはそれほど感じなかった。それだけに、2013年はどんなデザインで来るのだろうかと期待していた。そこに登場したのがXperia Zだ。
Xperia Zは米ラスベガスで1月に開催された「CES」で初めて披露されたが、見た瞬間に「うおお!」と思った。何よりも背面のガラスパネルが格好いいし、フラットなガラスの一枚板という発想は、これまでのスマートフォンにはなかった。2011年のアーク、2012年のFloating Prismと比べても引けを取らない、斬新なカタチだった。
ソニーモバイルのグローバル色の強いスマートフォンは、2012年まではおサイフケータイや防水などは対応せず、arcに対してXperia acro、NXに対してXperia acro HDなど、同時期に日本仕様に対応させたXperiaを販売していた。しかしドコモから発売された「Xperia Z SO-02E」は、おサイフケータイや防水にもしっかり対応させ、グローバル仕様と日本仕様をうまく融合させた。5インチフルHD、新しいCMOSセンサー「Exmor RS for mobile」、当時最新のQualcomm製プロセッサーを採用するなどスペックも申し分なく、ソニーが称する“スーパーフォン”と呼ぶにふさわしいモデルに仕上がった。
実際にXperia Z SO-02Eを購入したが、確かに満足感は高かった。スマートフォンは通常は画面を表向きにして置くが、Xperia Zは背面を表にして机に置いてしまう。とにかくガラスパネルを見せたくなってしまうのだ。また静止画と動画を鮮やかに見せてくれる「モバイルブラビアエンジン2」も個人的には気に入っていた。このようにXperia Zは「見る」部分を特に満足させてくれたモデルだった。
暗所での撮影機能に驚いたXperia Z1
一方で、Xperia Zには側面が角張っていて持ちにくい、デカイ、イヤフォンジャックがキャップ付き、といった不満もあったが、後継機の「Xperia Z1」がそれらの一部を解消してくれた。Xperia Z1は背面のガラスパネルはそのままに、フレームがZのプラスチックから金属に変更されたほか、側面をカットしたことで持ちやすくなった。Zベースのデザインだったので、初見の「うおお!」はZほどは感じなかったが、デザインがさらに洗練されたので、触れば触るほど満足度が上がっていった。
Xperia Z1で感動したのは、なんといってもカメラだ。ドイツで9月に開催された「IFA」で実機を使った際に「暗い場所でここまで明るく撮れるのか!」と驚いたのを覚えている。これまで、「暗い場所をスマートフォンで撮影するのは難しい」という暗黙の了解があったと思うが、Xperia Z1はそれを見事に覆してくれた。画質面で完全に満足しているわけではないが、Z1を超える「暗所に強いカメラ」をスマートフォンで実現できるメーカーは、しばらく現れないのではないだろうか。また、画質の劣化を抑えた「全画素超解像3倍ズーム」も、光学ズームほどではないが実用性が高く、撮影シーンが広がるので満足している。ソニーがXperia Z1で目指す“思い出画質”は実現できているのではと思う。
Xperia ZやZ1の「デカイ」という不満を解消すべく、4.3インチディスプレイ搭載の「Xperia Z1 f SO-02F」を投入したことも評価したい。ディスプレイ解像度やフルセグ非対応などの違いはあるが、Z1と同じ「デザイン」と「カメラ」をZ1 fに盛り込み、ソニーが重視するユーザー体験を得られることは大きい。ドコモのツートップ戦略の恩恵もあって夏に売れまくった「Xperia A SO-04E」は、acro/acro HDに続く「A」ラインの最新モデル、つまり(どちらかというと)スマホ初心者向けの一台だったので、個人的にはあまり食指が動かなかった。Xperia Z/Z1/Z1 fこそ、ソニーが持つ技術の粋が詰まったスマートフォンだったといえる。
Zシリーズ3機種の中から選ぶならどれか? ファーストインプレッションなら断然Xperia Zだが、デザインのブラッシュアップ、カメラ性能の大幅アップ、そしてOne Sonyを具現化するために初めて“フルスイング”したこと——を踏まえると、「Xperia Z1」を選びたい。
Xperiaのデザインは1年ごとに変更されるのが通例だ。2013年のXperiaは、どの方向からでも持ちやすい「オムニバランスデザイン」で統一されていたが、2014年はどんな新しいカタチを見せてくれるのか。ソニーモバイルコミュニケーションズ UXデザイン・商品企画部門 部門長の田嶋知一氏は「フラッグシップモデルは6カ月で進化させる」とIFAで話していたので、9月から数えると、2014年2月下旬開催の「Mobile World Congress 2014」で次期Xperiaが披露される可能性は高い。まだ気が早いが、次のXperiaもわくわくしながら待ちたい。
関連キーワード
Xperia | Xperia Z SO-02E | Xperia Z | Xperia Z1 SO-01F | Xperia Z1 SOL23 | Xperia Z1 | ソニー | ソニーモバイルコミュニケーションズ | 2014 CES | Xperia A SO-04E | Xperia acro IS11S | おサイフケータイ | Xperia acro SO-02C | Xperia Z1 f SO-02F | Mobile World Congress | CMOS | Exmor | フラッグシップ | フルHD | Xperia acro HD IS12S | モバイルBRAVIAエンジン | QUALCOMM(クアルコム) | Xperia arc SO-01C | Xperia AX SO-01E | Xperia NX SO-02D | Xperia ray SO-03C | Xperia acro HD SO-03D | Xperia GX SO-04D | ツートップ
関連記事
- ITmediaスタッフが選ぶ、2012年の“注目ケータイ&トピック”(編集部田中編):ジョジョ、透明、IGZO、ひと目惚れ——差別化が難しい中で“スゴ味”を感じたスマホたち
2012年は数多くのスマートフォンが登場した一方で、スマートフォンの差別化の難しさも感じさせられた。そんな中で筆者にとって特に印象の強かったモデルをピックアップしてみた。 - 日本でも発売予定:Sony Mobile、5インチフルHD液晶+クアッドコアCPU搭載の「Xperia Z」を発表
2013年のフラッグシップモデルとなる新しいXperiaが発表された。その名も「Xperia Z」。5インチのフルHDディスプレイやクアッドコアプロセッサー、1310万画素のExmor RS for mobile」を搭載する。フラットなボディの背面にガラス素材を用いるなど、デザインも意欲的だ。 - 2013 International CES:ソニーブースで「Xperia Z」をじっくり触ってきた——写真と動画でチェック
今回のCESで発表されたスマートフォンの新機種の中でも特に注目度の高いモデルが、Sony Mobileの「Xperia Z」だろう。デザイン、持ち心地、ユーザーインタフェース、カメラなどの見どころをお伝えしよう。 - 2013 International CES:新機軸のデザインを採用した“スーパーフォン”——「Xperia Z」開発の意図を聞く
CESで発表されたスマートフォンの中でも特に注目を集めているのが「Xperia Z」だろう。「オムニバランスデザイン」というコンセプトに込めた意図とは。そして背面にガラスを採用した理由は——。Xperiaの商品企画を担当する黒住氏に話を聞いた。 - 開発陣に聞く「Xperia Z SO-02E」(前編):新しい体験と美しさ——「Xperia Z」の“ガラスの1枚板”に込めたメッセージ
スペックの高さはもちろんだが、7.9ミリというスリムなボディと、背面のガラスパネルが大きな存在感を放っている「Xperia Z SO-02E」。開発者インタビュー前編では、企画、プロダクトデザイン、カラー&マテリアルの担当者の話をお届けする。 - 日本でも発売予定:ソニーモバイル、Gレンズ+2070万画素カメラ搭載の「Xperia Z1」を発表
ソニーモバイルが、Xperiaの新しいフラッグシップモデルである「Xperia Z1」を発表。ソニーの高性能デジタルカメラに採用されている「Gレンズ」を搭載し、2070万画素と信号処理によって、解像感を保ったまま最大3倍のズームが可能になった。今秋発売予定。 - IFA 2013:「Xperia Z1」をじっくり触ってきた——外観/Xperia Zとの違いをチェック
ソニーモバイルが、新しいXperiaである「Xperia Z1」を発表した。まず気になるのは、その外観。短時間ながら、プレスカンファレンスでじっくり触ってきたので、写真でリポートしよう。Xperia Zから進化した点もまとめた。 - 初めて“フルスイング”したOne Sonyのスマートフォン——平井社長と田嶋氏が語る「Xperia Z1」
9月のIFAでグローバルモデルが発表後、日本でも10月に発売された、ソニーモバイルの最新スマートフォン「Xperia Z1」。このZ1を軸に、ソニーはどんな事業展開を図っていくのか。そしてZ1に込めた想いとは? ソニーの平井社長と、ソニーモバイルの商品企画を統括する田嶋氏に話を聞いた。 - Xperia ZやiPhone 5とも比較:2070万画素“Gレンズ”の実力は?——「Xperia Z1」のカメラ機能を徹底レビュー
「Xperia Z1」で大きく進化したのがカメラ機能だ。F値は2.0に、画素数は2070万にまで上がったが、画質はどれだけ違うのだろうか。Xperia Z、iPhone 5、HTC J Oneとの比較も交えつつ、レビューした。新たな撮影機能についても紹介しよう。 - 4G LTE対応:フルメタルボディに“新しい”カメラ、サウンド、UIを搭載——「HTC J One HTL22」
HTCのグローバルモデル「HTC One」の日本向けモデルがKDDIから発売される。「HTC J One HTL22」は、フルメタルボディに4.7インチフルHDディスプレイ、Ultra Pixelカメラ、フロントデュアルスピーカーなどを搭載した。 - 写真で見る「HTC J One HTL22」(レッドメタル)
HTCのau向けスマートフォン「HTC J One HTL22」に新色「レッドメタル」が登場。日本(au)向けHTCスマホといえばレッドが定番カラーだが、フルメタルボディのレッドはどんな色なのか? 写真でチェックしよう。 - 荻窪圭の携帯カメラでこう遊べ:これぞスマホ時代の遊べるカメラ——「HTC J One」の“Zoe”を試す
今までのケータイやスマホのカメラ機能は、本職デジカメを追いかけてきたが、「HTC J One」は、スマホならではの「コミュニケーションに強いカメラ機能」を目指したように思える。その筆頭ともいえる「HTC Zoe」を試した。 - 荻窪圭の携帯カメラでこう遊べ:400万画素“UltraPixel”の実力は?——「HTC J One」の画質をチェックする
HTC J Oneの「UltraPixel」カメラには、400万画素の撮像素子を採用している。画素数は少ないが、1つ1つの画素が大きく、感度が高くなる。そう考えれば、400万画素が英断だってのが分かるかと思う。では画質はどうなのか。 - IFA 2013:HTCブースでHTC Oneの新色「Vivid Blue」を展示、OSはAndroid 4.3に
HTCはIFAで新製品を発表していないが、小規模なブースでスマートフォンを展示している。その中には「HTC One」の新色や、「HTC One mini」なども見られた。また、HTC OneのOSがAndroid 4.3にバージョンアップされていたので、改善された機能もチェックした。
Copyright© 2013 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.