浅見純一郎氏(38)は安定した仕事を捨て、3Dプリンタのビジネス活用を目指す日本人起業家の仲間入りを果たしたが、安倍晋三首相はまさにこうした開拓者魂こそが「日本の疲弊した経済を立て直す力になる」と期待している。
ただし、こうした起業家が日本製品の新たな時代の基礎を築けるかどうかは恐らく、安倍首相が「リスクを嫌い、現状維持を好む日本企業文化の壁を打ち破れるか否か」にかかっている。
かつてデロイトトーマツコンサルティングで経営コンサルタントを務めていた浅見氏は、3Dプリンタビジネスの明るい前途を確信し、「3Dプリンタは市場を一変させる技術になる可能性がある」と考えている。3Dプリンタがあれば、個人や企業は製造業者に頼らずとも、自分の思い通りの部品や商品を製造できるようになるからだ。
「3Dプリンタに適応するために、企業はビジネスモデルや生産システムを丸ごと変えなければならなくなるだろう」。浅見氏は起業家向けのセミナーで、そう語る。
これまでの歴史からすると、浅見氏と安倍首相に課せられた課題は容易ではない。第2次世界大戦後、日本には数多くの企業が誕生し、その幾つかが電機大手ソニーのような大企業へと成長していった。たが、リスクや失敗を恐れる風潮が徐々に広まり、それ以降、日本はテクノロジーの分野で世界的な大企業を生み出せずにいる。
ここ20年間の景気低迷に終止符を打つための大胆な政策を掲げて約1年前に発足した安倍政権は、技術革新を推進し、日本を「企業が活躍しやすい国」にすることを目指している。だが安倍首相が現在取り組んでいるのは、主に旧来型の大企業を中心に確立されている政治経済システムの改革だ。
さまざまな分野に広がる障壁を撤廃するための規制緩和策に対する期待は高かった。だが、安倍首相が今年6月に打ち出した経済成長戦略では多くの分野が手付かずのまま残された。
安倍首相は雇用や解雇をめぐる規制緩和など、より大規模な経済改革の実行にも苦戦している。アナリストによれば、こうした改革はよりダイナミックな経済活動を促すという。
だが、小規模ながら、浅見氏をはじめとする起業家にとってプラスとなるような成果も幾つか出てきている。
企業の幹部やコンサルタントによれば、最近は政府補助金を受けやすくなっており、このことは、リスクを嫌う日本の銀行から追加融資を受ける上でもプラスに作用する可能性があるという。
政府は2013年春、約6年間棚上げにしていた起業支援のための補助金を全国規模で復活させた。これまでのところ、この補助金の採択率は77%と非常に高くなっている。
この補助金に応募する企業の数も急増し、4月の15社から、6月には2302社にまで増えている。
3Dプリンタに関しては、経済産業省もその可能性を認識しており、ハイエンド3Dプリンタの開発支援のために予算の概算要求に45億円(4400万ドル)を盛り込む方針という。
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