2014年4月、消費税率が8%に改正される。この増税に対して企業のIT部門はどのような対策を講じればいいのか。
ノークリサーチの岩上由高シニアアナリストは「ある程度の備えは必要だが、例えば、税率が5%のうちに急いで新たなIT設備投資をしてしまおうなど、計画性のない取り組みはかえって逆効果だ」と指摘する。
以下では、同社の調査などを交え、消費税アップに関して企業のIT担当者が気を付けるべきポイントを岩上氏が解説する。
消費税アップは他人事ではない
そもそも消費税については、すべての企業が対象というわけではなく、課税売上高が1000万円以下の事業者は納税の義務が免除される。しかしながら、岩上氏によると、たとえ売り上げが1000万円以下の企業であっても、親会社や取引先に併せてシステムを改変しなければならないというケースも少なくないため、増税に向けた準備は必要だという。
すなわち、「あらゆる企業のIT部門にとって消費税改正は無関心ではいられないテーマだ」と岩上氏は述べる。
そうした中で、年商500億円未満の中堅・中小企業を対象にノークリサーチが行った調査結果によると、消費税率改正を見越してIT投資を前倒しすると回答した企業は約4割いたことが分かった。具体的な内訳としては、基幹系システムが23.7%と最も多く、ハードウェア(22.0%)、情報系システム(16.4%)、運用管理系システム(11.9%)と続いた。
この中で、特にハードウェアについて、もしリース製品であれば、その内容を考慮して対応する必要があるという。リースには、顧客が選んだものをリース会社が代わりに購入し、貸与する取引である「ファイナンスリース」と、いわゆるレンタル契約にあたる「オペレーティングリース」がある。前者の場合は、税率改正前に契約を締結すれば消費税5%のままでの支払いで済むが、途中でキャンセルできないことや、故障などがあった際には借り手自身が対応するといったフルペイアウトとなっている。後者の場合は、途中解約が可能で、故障修理もすべてリース会社が請け負ってくれるが、増税後は月々の支払いの消費税率が8%に上がる。
「前倒しでシステム投資するのであれば、リースの契約形態を踏まえて、自社にとって最適な選択は何かを考えてほしい」(岩上氏)
また、消費増税に伴いシステム改変が必要となるものについて問うた結果、合計で約4割の企業が改変を必要とし、具体的には、会計管理(23.6%)、販売・仕入、在庫・管理(22.9%)、ERP(9.7%)などのシステムを挙げた。
さらに、これら4割の企業において、最重要システムに位置付けられているシステムの改変進行状況はどうだろうか。「対応実施中であり、2014年4月に間に合う」という回答が48.4%で最も多く、以下、「未実施だが、2014年4月に間に合う計画がある」が26.2%、「既に対応を完了している」が9.3%と続いた。ここでも岩上氏が強調するのが「計画性」だ。
例えば、同時期にWindows XPのサポート終了が控えているため、ITベンダなどの提供者側は、新たなOSを搭載したスマートフォンやタブレットの端末を、増税による前倒し投資の機運に併せて提案するケースが散見されるそうだ。仮にクライアント端末の刷新が当初から計画に入っていれば良いが、提供者側に振り回されて無計画のまま導入するのは本末転倒だという。「ユーザーは自社のシステム環境をしっかりと見つめて、冷静な判断をしなければならない」と岩上氏は力を込める。
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