連載第2回:「機器を買い替える」
「スマートな節電」の基本は、電力を多く使う機器の使用量を抑えることである。そのためには、どの機器でどのくらいの電力が使われているかを把握する必要があるが、実現できていない企業が意外に多い。さほど電力を消費していない機器で節電対策を実施しても効果が小さいことは明らかだ。
「見える化」してから節電対策を
最近は電力の使用量をわかりやすいグラフで「見える化」してくれるシステムが数多く販売されるようになった(図1)。時間帯や日ごとの電力使用量を機器の種類別に集計できるほか、ビルのフロア別や部署別の集計・分析も可能である。そのデータを見て節電対策を実施すれば、少ない手間で大きな効果を得ることができる。
さらに機能が進化したシステムでは、電力の使用量をもとに自動的に機器を制御することも可能だ。見える化の機能だけだと、空調の温度設定や電源のオン/オフなどの操作を人間が実行しなくてはならない。システムが常に状況を監視しながら必要な操作まで自動化できれば、よりいっそう便利である。
例えば、電力の使用量が一定以上になったら、空調の設定温度を自動的に1度下げたり、照明の一部を消したりする。これで電力のピークを抑えることができ、電気料金も増えずに済む。高度なシステムになると、機器を制御する条件をきめ細かく設定して、優先順位に基づいて段階的に節電対策を進めることまで可能だ(図2)。
電気料金の単価に合わせて機器を自動制御
電力使用量の見える化に加えて、空調や照明などの電気機器を自動制御できるシステムが「BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)」と呼ばれるものである(図3)。電力の使用量はビル内にある分電盤から取得する方法が一般的だが、個々の機器にセンサーを取り付けて計測する方法もある。
最近では電力会社が次世代電力計の「スマートメーター」を企業や家庭に設置して、毎月の使用量を自動的に検針できるシステムの整備を進めている。このスマートメーターとBEMSを連携させると、電気料金の単価に合わせて機器を制御することも可能になる。単価が高い時間帯になったら電力の使用量を自動的に抑えられる仕組みだ。
BEMSを提供する専門会社は「アグリゲータ」と呼ばれていて、利用する企業のBEMSからデータをネットワークで収集して分析するサービスを提供している。過去の実績と比較したり、同規模のビルとの差を分析したりして、節電の状況を診断する。さらにセンターから遠隔で監視しながら、必要に応じて機器を制御することもできる。企業の中に節電の担当者がいなくても、最適な節電対策を実行できるようになるわけだ。
家庭向けのHEMSはスマホからでも使える
政府は中小企業を含めてBEMSを広く浸透させるために、2012年度から補助金制度をスタートさせた。少ない初期投資でBEMSを導入することができ、導入後の電気料金の削減と合わせて投資効果を発揮しやすくなっている。2014年度からは新しい補助金制度でBEMSの普及を促進する予定だ。
BEMSと同様のシステムは家庭向けでも「HEMS」がある(図4)。HEMSに対しても国や自治体の補助金制度がある。スマートハウスと呼ばれる新しい住宅ではHEMSを標準装備している場合が多い。今後は家電製品をHEMSで制御できるようになり、外出先からスマートフォンで状況を確認したり電源をオン/オフしたりすることも可能になる。
電力会社は電気料金を値上げするのと並行して、時間帯別や曜日別に単価を変えた新しいメニューを増やしている。BEMSやHEMSを使って電力の使用量を把握することができれば、利用状況に合った最適なメニューを選んで電気料金を安く抑えることができる。次回は電力会社との契約メニューを見直して電気料金を引き下げる方法を説明しよう。
連載第4回:「契約メニューを見直す」 9月26日掲載予定
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