スマートフォンのアプリ開発が盛んになる中で、スマートフォンには搭載されていないセンサーなどをスマートフォンと連動させ、新しいアプリ、サービスを提供しようとする動きも活発化しつつある。スマートフォンアプリと連動する周辺機器/アクセサリーを指す“アプセサリー”(App-ccessory)という新しい言葉も登場している。
しかし、アプセサリーという言葉はあるものの、アプセサリー自体は、あまり利用されていない。というよりも、製品化されているアプセサリーの数自体が少ないのが現状だ。アプセサリーの製品化が進まない要因の1つは、「無線対応」という壁が立ちはだかっていることにある。
機器に無線機能を搭載するには、自ら無線ICを購入し、各種無線規格に沿ったソフトウェアを開発しなければならない。しかし、高周波回路や複雑な規格に準拠するソフトを開発するには、かなり高度な技術が要求される。アプセサリーを企画するアプリベンダーにとって、そういった技術は専門外だ。
そこで、無線に関わる全てのハード、ソフトを搭載し、無線規格や電波法の技術基準に適合しているとの認証、いわゆる「技適」を取得済みの無線モジュールが販売されている。この無線モジュールをアプセサリーに組み込むことで無線対応は実現できるのだが、新たな問題が発生する。それは、コストとサイズだ。アプセサリーを構成する場合、無線モジュールの他に、アプセサリー本来の機能を制御、処理するプロセッサやセンサーを搭載しなければならない。部品コスト、基板サイズは大きくなってしまう。無線モジュールに搭載されるプロセッサに本来の機能を制御、処理させることも可能だが、その場合は無線プロトコルなど各認証に関わる部分を含めたソフト開発が必要となり、無線の知識が必要になる。さらに無線モジュールメーカーにとっては、カスタム対応となるため、小ロットの製造には応じてもらえない。
通信プロトコルスタック部分を完全に隔離
ノルディックセミコンダクターは、これら無線対応アプセサリーの開発を妨げる要因を取り除く技術「Soft Device」を開発した。このSoft Deviceは、認証に関わる通信プロトコルスタック部分とその上位のアプリケーションソフトウエア部分を完全に切り分けることができる技術だ。通信プロトコルスタック部分が完全に隔離されているため、アプセサリー開発者が無線モジュール側にアプリケーションソフトを追加する際も、無線規格への対応を意識せずに済み、無線モジュールがあらかじめ各認証を取得していれば、開発者側で認証取得などの手間も一切生じない。
同社では2012年から、Soft Deviceに対応する無線IC「nRF51シリーズ」を製品化。同シリーズは、多くのスマートフォンで対応が本格化しているBluetooth Smart(Bluetooth low energy)対応品やPAN向け無線通信プロトコル「ANT+」対応品がピンコンパチでそろう。nRF51シリーズは、CPUにARM Cortex-M0、フラッシュメモリ256KByte(一部、128KByte)を搭載する。Bluetooth Smartのプロトコルスタックのメモリー占有量は、「80KByte程度であり、150KByte程度をユーザースペースとして利用できる」という。
さらに、「ワイヤレスジャパン2013」(2013年5月29〜31日、東京ビッグサイト)で、このnRF51シリーズを搭載した無線モジュールを日本国内のモジュールメーカー5社が製品化したと発表した。富士通コンポーネント、ホシデン、SMK、太陽誘電、Braveridgeの5社の無線モジュール製品はいずれも、Bluetooth Smart規格認証、技適認証を取得済み。無線モジュールにアプリケーションソフトを組み込み、必要に応じてセンサー、バッテリーなどを接続し、筐体に収めれば、アプセサリーが開発できる。
「“MAKERS”の流れにも合った画期的なソリューション」
「無線モジュールは、500円程度の価格で1個から手に入れることができる。ユーザー側で面倒な規格認証作業なども必要なく、アプリケーションソフト開発も一般的なARMコア搭載マイコン用のツールが使えるため、個人でもBluetooth Smart対応機器を作ることができる。3D CADや3Dプリンタなどを使って個人でモノを作る“MAKERS”の流れにも合った画期的なソリューションだ」という。
ノルディックセミコンダクターは、アプセサリー分野以外にも、ラジコンやリモコンなど潜在的な無線化ニーズを持つあらゆる用途に対し、モジュールメーカーと連携して提案していく予定。さらにモジュールを購入したユーザーに対しても、「ブランクスペース」と呼ぶユーザーアプリケーション部分の開発に関しては、ノルディックセミコンダクターがサポートを行っていく。
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