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VOCALOIDエンジン引っさげ、ヤマハがゲームに参入 第1弾「ボカロダマ」で遊んでみた

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 ヤマハがVOCALOIDの裾野を広げようとしている。VOCALOID 3をこれまでのWindowsだけでなくMacにも対応させたのを皮切りに、PC以外のプラットフォームにも展開。ニンテンドー3DSの目玉タイトル「バンドブラザーズ」にVOCALOIDエンジンを搭載し、セガのiOSゲーム「うた詠み575」でもVOCALOIDエンジンが使われている。

 そして今回、完全自社開発によるiPhoneゲームアプリ「ボカロダマ」を公開した。ヤマハがパッケージの形でゲームを販売するのはこれが初めて。なぜゲームなのか? VOCALOIDのスマートデバイス展開を担当する「VOCALOIDの叔父」こと大島治さんに聞いてみた。

 「もともとVOCALOIDをiOSに移植するのはできていて、その成果としてVocaloWitterやiVOCALOIDを売っているんですが、外部のデベロッパーに向けて売っていこうということで、『iVOCALOID SDK』ということで仕様をまとめてエンジンをサードパーティに提供することに。その最初の例がセガさんの『うた詠み575』なんです」

画像ボカロダマ

 セガといえば、PSPやPS Vita、プレイステーション 3向けにProject DIVAという大ヒット音ゲーを開発・販売している。iOS向けにも「ミクフリック」を販売している。ただ、これらのボーカルはあらかじめ録音されたもので、VOCALOIDエンジンで歌声を生成するというものではない。VOCALOIDエンジンが搭載されたのは「うた詠み575」からだ。

 ではなぜヤマハが、というと、「iVOCALOID SDK」をさらに売り込みたいからだ。実は今回「ボカロダマ」に搭載されているVOCALOIDエンジンは機能が上がっている。遅延の少ない、リアルタイムに近い発音が可能になったのだ。だから、リアルタイム処理を必要とするゲームでもVOCALOIDが使えることを実証するという意味もある。

 実証といっても、ヤマハはそれなりに本気で売りたいと考えていて、課金システムや豊富な楽曲も用意している。すべてヤマハの中で開発しているというのはちょっと驚きだ。どの程度楽しめるか、実際にプレイしてみた。

遊んでみた

 画面下の機械で生成されて上に移動していく7色の「ボカロダマ」を、同じ色のパイプに移動させると画面の上端に到着したとき正しい音程で歌ってくれるという音ゲーだ。ひとつひとつのボカロダマには歌詞のひらがなが表示されており、その言葉の通りに歌う。間違ったパイプに置いてしまうと、間違ったメロディーになってしまう。

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 実はこの7色のパイプは、音楽制作の世界ではピアノロールと呼ばれる、ピアノの鍵盤に相当するものなのだ。ただし、音の高さは逆で、左にいくほど高い。音は上から落ちてくるのではなくて、下から上がってくる。ピアノを知っているからといって簡単かというと、逆に難しかったりする。

 最初から入っているのはこの3曲。

  • 故郷(ふるさと)
  • トロイカ(寿司)
  • トルコ行進曲(オワタ\(^o^)/)

 版権切れのものばっかりじゃん、と思ったあなた、ここにボカロ曲が2曲含まれているのにお気づきだろうか? 3曲目の「トルコ行進曲」はオワタPの出世作となったものだし、2曲目の「トロイカ」は(寿司)という珍妙なタイトルになっていることから一部の人にはわかるかもしれないが、tamachang編曲、isshy作詞というボカロP夫妻による作品なのだ。歌詞がおかしすぎる。

 しかし、これが難しい。画面にボコボコ現れるボカロダマが色違いのところにあることに気づいたら、それを正しい色に導かねばならない。けっこう高速で浮上してくるので、早めに気付いてひっつかまないといけないのだ。画面の上のほうまで行ってからでは遅すぎる。そして、移動させるのはフリックじゃだめで、つかんで正しいパイプのところで離さないといけない。

 正しい場所に移動させないと、音痴な歌を歌われてしまう。これはいくら最底辺とはいえ、ボカロPの名折れだ。頑張らねば。

 音ゲーマニアである息子にもプレイしてもらったのだが、「1つでも間違えると音痴になって、達成感という意味では難しい。画面が狭いのでボカロダマをちゃんとつかむのが難しい」といった厳しい意見が返ってきた。ぼくは音痴はいやなのでかえって頑張ろうという気になったけど、普通の音ゲーとは違うので戸惑う人はいるかもしれない。画面が狭いのは、iPadの拡大モードでやるといいんだろうなあ、と思う。

 とは言え、何度かやっていくうちにコツをつかんできた。ボカロダマに書かれている歌詞を読めるくらいまで慣れたら、このメロディーラインならここにあるのはおかしいだとう、とか推測できるかもしれない。

 画面の1番上に来るまでに正しい色のパイプに移動させないと音痴になってしまうのだが、隣じゃなくて、ひとつ離れたところだと、3度の音程になって「このメロディーでもいいんじゃね?」とか思ってしまう。いいメロディーなら点数がほしいところだ。むしろ、こういう作曲ツールも緊張感があっていいかもしれない。

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 ちなみに歌ってくれるのはVY1。iVOCALOIDにも使われている、滑舌がよくてくせのない万人受けする女声だ。「トロイカ(寿司)」は兎眠りおん、「トルコ行進曲(オワタ\(^o^)/)」は初音ミクがオリジナルだが、ここでは全部VY1が歌う。VY2や蒼姫ラピスもiVOCALOID版があるから利用可能だと思うが、まずはVY1からということらしい。

 プレイできる曲のオプションパックは5種類。ヒット曲パック1「ヘビーローテーション」「キセキ」「ロビンソン」、ヒット曲パック2「残酷な天使のテーゼ」「無限の愛」「Diamonds」、ヒット曲パック「ポリリズム」「女々しくて」「さくらんぼ」、子供曲パック1「アンパンマンのマーチ」「となりのトトロ」「森のくまさん」、ボカロ曲パック1「千本桜」「マトリョシカ」「ダブルラリアット」。それぞれ300円だ。

 さらに、5種類を現在準備中という。オプション曲にはボカロ曲も入っているが、20代の男女をターゲットにしているのでJ-POPのヒット曲がメインだ。このへんも、ユーザーを広げようという実験の一環なのだろう。

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 iVOCALOID SDKは、リアルタイム処理に近づいたということで、楽器としての利用価値もさらに高まりそうだ。iVOCALOIDをライブ演奏で使った試みはいくつかあり、実際に自分でもやってみたが、リアルタイム処理できないためほかの演奏と同期させるのが困難だった。今回の改善でこちらも面白くなりそうだ。iVOCALOIDのピアノロールスタイルとはまったく異なったクリエイター向けツールも準備しているみたいなので、こちらも期待したい。

 音楽制作ツールとしてのVOCALOIDは、ようやくMacに対応し、クリプトン・フューチャー・メディアやインターネットが対応エディターを作り始めたことで広がりを持った。ヤマハの次の課題はVOCALOIDの利用シーンを広げること。そのためにニンテンドー3DSなどのゲームプラットフォームやiPhone、iPadなどのスマートデバイスでサードパーティに使ってもらおうとしている。

 ドコモがiPhoneを売り始め、日本のスマートフォンが一気にiPhoneに向かおうとしている現在、VOCALOIDの裾野を拡大できるかどうかはiVOCALOID SDKの成功にかかっているといっていい。

 そんな期待が込められた「ボカロダマ」。無料なので何も気にせずまずは楽しんでみるのももちろんオッケーだ。単純だが難しい音ゲー。新米ゲームデベロッパーとしてのヤマハはどうだろう?

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