SIの重要な要素となるBPMへのIT活用
「経営力の強化に向け、BPMシステムを導入する企業がここにきて増えてきている」
富士通SI技術本部の中村記章SVP(シニアバイスプレジデント)は8月30日、同社が開いた記者向けのSIビジネス勉強会で、SIにとっても重要な要素であるBPM(ビジネスプロセスマネジメント)へのIT活用についてこう語った。
BPMへのIT活用は早くから注目されてきたが、日本の企業ではこれまであまり導入の気運が盛り上がらなかったというのが実態だろう。ただ、中村氏によると、ここにきてその気運が盛り上がりつつあるという。なぜ今、BPMシステムが求められるようになってきたのか。それを探るためにも、まずはBPMとは何かについて明確にしておきたい。
改めてBPMとは、業務の流れ(プロセス)を単位ごとに分析・整理することによって問題点を見い出し、最適な作業の仕方を模索するマネジメント手法のことである。中村氏は「ビジネスプロセスに設計・実行・監視・改善というPDCAサイクルを適用し、継続的なプロセスの発展を目指すマネジメント手法」と説明している。
BPMは、個々のプロセスについて効率化や統廃合といった改善ができる。BPMを実行すれば、作業における人的ミスが低減され、プロセスの迅速化が図れるようになる。さらに新しいプロセスを取り入れる際には、前後のプロセスへの悪影響を最小限に抑えることが可能となる。
大きな特徴は、ビジネスプロセスの管理と改善が1回限りで終わるのではなく、一定のサイクルを回しながら常に最適を追い求めて改善を図り、業務の生産性を向上させていく点にある。
ただし、そうした管理は人手では途方もなく負担がかかる。そこでBPMを実現する基盤としてIT活用が注目されてきた。つまり、BPMの実行をITで支援するのがBPMシステムである。SIの観点でいえば、「複数の業務システムを統合・制御・自動化し、BPMの具現化を支援するシステム」(中村氏)となる。
BPMシステムは、ビジネスプロセスの可視化・効率化・迅速化・最適化を図ることができる。しかし難点としては、投資対効果が見えにくいこと、自社に適したビジネスプロセスを設計し実装まで終えるには相応の時間を要することなどが挙げられてきた。
企業のIT活用の変化がBPMの追い風に
そんなBPMシステムが、なぜ今求められるようになってきたのか。その理由について中村氏は、昨今の企業におけるIT活用の変化を踏まえて次の2点を挙げた。
まず1つは、さまざまなシステムをつないでビジネスをタイムリーに立ち上げたり強化したりするニーズが高まってきたことである。さまざまなシステムとは、「企業内のサイロ化された既存システム」「取引先など外部企業との連携システム」「クラウドサービス」を指す。これらを一連のビジネスプロセスとして柔軟につないでビジネスの増強を図りたいというニーズである。
もう1つは、スマートデバイスやソーシャルネットワークの活用によって多様化するビジネスプロセスを迅速に組み上げ、確実に実行・整理したいというニーズが高まってきたことである。スマートデバイスやソーシャルネットワークの活用によって、企業のビジネスプロセスが多様化し肥大化していくのは確実だが、それらをも一連のビジネスプロセスとして柔軟につないでいきたいというニーズである。
つまり、企業内のサイロ化された既存システムの連携・統合から、クラウドサービスやモバイル、ソーシャルネットワークといった新たなITへの対応まで、企業におけるIT活用が大きく変化してきていることが、BPMシステムのニーズの高まりにつながっているのである。
中村氏はさらに、企業のIT活用に対する経営者や情報システム部門の基本的な認識も、ここにきて次のように大きく変わりつつあるという。
「企業におけるIT活用はこれまで業務の効率化が最大の目的だったが、その活用の仕方が大きく変化する中で、経営力やビジネスの競争力を高めていくことに最重点を置く傾向がここにきて強まってきている。BPMシステムのニーズの高まりは、経営者や情報システム部門の間でそうした認識が広がっていることを象徴した動きだととらえている」
ちなみに、富士通ではこうしたBPMシステムのニーズにすべて対応したソリューション群を用意し、プロセス設計を含めた要件定義手法やエンジニアなどの陣容面でも増強を図っているという。勉強会では同社のBPMソリューションを導入して効果を上げている事例もいくつか紹介された。
同社の説明を聞いて、中村氏の冒頭の言葉通り、BPMへのIT活用は、経営力の強化を目的にいよいよ日本の企業へも本格的に広がっていきそうな気運を強く感じた。むしろ、BPMシステムを活用して日本の企業がグローバル市場に打って出るような新サービスをどんどん生み出していってほしいものだ。
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