前モデル「DMC-GX1」から2年の歳月を経て登場するパナソニックのミラーレスカメラ「DMC-GX7」(以下GX7)。「ミラーレスのポテンシャルを引き上げていくこと」を念頭に置きながらの開発が進められ、“ミラーレス最高級画質”をうたう自信作となっている。前編に引き続き、AVCネットワーク社 DSC事業部 事業部長の北尾一朗氏に話を聞いた。
像面位相差AFは「慎重に進める」
——2011年末ぐらいから「センサーの大型化」と「ローパスレス仕様」、2013年には「像面位相差」「EVFの高性能化」などがデジタルカメラの技術的トレンドのキーワードとして挙げられます。これらについて、どのような感想を持たれますか。
北尾氏: わたしたちはマイクロフォーサーズを極めることが大切と考えていますので、まずはセンサーなどキーコンポーネントの開発を進めていきたいと思います。
像面位相差AFについては動画での利用を考えるとシビアにならざるを得ないので、慎重に進めていきたいところです。ただ、位相差AFをやらなくてはいけない理由は実のところあまりありません。レンズはすべて開発段階からコントラストAFでの利用を念頭にしていますし、コントラストAFの弱点といわれる暗所撮影についても、GX7なら−4EVという低照度環境下でも機能していることが大きな理由です。
センサーサイズについては、いくつかのサイズに収束をしていく気がしています。フルサイズにはフルサイズの良さ、マイクロフォーサーズにはマイクロフォーサーズの良さがあります。わたしたちはマイクロフォーサーズのカメラとレンズを製造していますので、そのサイズをいかした製品作り、システム作りをしていくことに集中していきます。
サイズをいかしたシステムという意味では、今夏に発売した「DMC-G6」と新型の14-140ミリ(「LUMIX G VARIO 14-140mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」)の組み合わせは非常にバランスのよい組み合わせであると思います。この組み合わせならば、APS-C機に3倍ズームレンズを組み合わせたのとほぼ同サイズながら、10倍ズームのシステムとなります。
ただ、「バランスの良さ」は「突出した部分がない」とも見えてしまうことも認識しています。Gシリーズは写真趣味層向けではなく、より一般的な層を意識した製品ですが、その部分は見直してもいいのではないかとも考えています。
——GX7の登場でGH/GX/G/GFの各ラインが刷新されたことになります。マイクロフォーサーズシステムとして、次に注力すべき分野はどこにあると思われますか。
北尾氏: GH3にGF6、G6、そしてGX7とそろったことで、ボディについては当面のラインアップが完成したと考えています。レンズもオリンパス製品やその他メーカーの製品を入れればだいぶバリエーションが増えています。ただ、システムとしてみた場合にはストロボなどのアクセサリがまだ弱いと思っていますし、「マイクロフォーサーズ」としてさまざまな選択肢の中でシステムの充実を図りたいと考えています。
レンズについては高性能シリーズのXレンズとライカブランド、双方のより本格的な写真趣味層向け製品も積極的に出していくつもりです(8月にはライカブランドの大口径レンズ「LEICA DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2」の製品化が告知されている)。Xレンズとライカレンズはいずれも高性能な製品ですが、Xレンズについてはより高機能・高性能、ライカレンズについては独特の味、情緒といったニュアンスを求められると考えていますので、双方の充実を図りたいと考えています。
——スマートフォン(携帯電話)を含めれば既にカメラの普及率は相当なものになりますが、スマートフォンやコンパクトデジカメから、レンズ交換式へのステップアップを促進させるような製品展開やマーケティングは意図されているのでしょうか。
北尾氏: スマホの普及で写真の撮影枚数は爆発的に増えていますし、SNSの普及などもあり「良い写真」を目にする機会も増えています。そうした環境が一般的になっている今、「良い写真を撮りたい」と思って欲しいと思いますし、そう考えた方にスマホではなくカメラを手にして欲しいと考えています。
そこで私たちからのアプローチや問いかけが必要かどうかは考えどころですね。「写真を撮りたい」という方々がおられるときに、カメラを手にしてもらう用意を私たちが仕掛けておけばいいのではないかと感じています。写真を撮る・写真を見る機会が増えているのは、カメラ業界にとってよいことだと思います。
LUMIXもブランド立ち上げから10年が経過しています。一時期はセグメント、ターゲットをこちらが想定していて製品を企画してきましたが、最近はそうではないアプローチの方がよいのではと感じています。GX7についていえば、年配の方も若年の方も、女性も男性も手にして欲しいです。私たちはそのカメラの「世界観」を作って、その世界観に共感していただいた方に手にして欲しいと願っています。
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