電子書籍小売で業界トップの企業が実施してきたさまざまな施策や、Appleと当時の米国6大出版社のうち、5社が関与したとされる価格操作疑惑に対して司法省が起訴に踏み切ったにもかかわらず、電子書籍の価格はいまだに業界関係者と消費者を惑わせている。
The New York Timesが独立記念日の週末に掲載した記事は、出版業界の格好の標的であるAmazon.comの肩にのしかかる一部の混乱を非難しているが、確かに、Amazonが書籍小売業界で果たしている重要性を考えれば、ここ数年で書籍が経験した価格の変化の一因は、小売の巨人との純粋な競争と関連している可能性はある。
往々にして見過ごされており、電子書籍を値付けする際に多くの個人出版著者も忘れがちな事実の1つとして、海外では書籍の値付けが一律ではないことが挙げられる。しかし、海外の小売市場が増えるにつれ、それも変わりつつある。書籍の高い小売価格に慣れていた顧客は、必ずしもそうした価格が万国共通のものでないことに気づきはじめている。
さらに、KoboのWriting Lifeサービス部長のマーク・ルフェーブル氏が5月にGood e-Readerとのインタビューで指摘したように、紙書籍はジャンルによって制作コストが異なるため、ジャンルごとに異なる値付けが行われている。しかし、電子出版があらゆるジャンルで安価な書籍を提供しつつある中、著者と出版社は伝統的に高い小売価格を享受していた書籍に、より多くの金を払うよう消費者を納得させるのは難しいと理解しつつある。
電子書籍の値付けの興味深い側面の1つは、本の価格は多くの出版社が論じようとしなかったトピックの1つであるように思われることだ。何気なく発した一言やシンプルな電子メールが価格操作訴訟の証拠として取り扱われてしまう現在の状況で、それがなぜなのか理解するのは簡単だ。
業界と消費者が値付けから学ぶべきは、デジタル革命によって明らかになったように『すべては変わる』ということだろう。出版業界は速いペースで起こる変化に抗い続け、スタートアップ企業は次の大きな動きに資金を投じ続けるかもしれないが、変化を取り入れつつ、何がうまくいき何がうまくいかないのかしっかりと理解している企業だけがこの市場で生き残れるのだろう。
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