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後編はパーツ単位まで分解して語り尽くす
注意!
製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは取材した機材のものであり、すべての個体に該当するわけではありません。
本特集では、ソニーが発売した“超”軽量モバイルノートPC「VAIO Pro」の開発陣にロングインタビューを行い、実機の分解とともに、各部のこだわりを明らかにしていく。
前編は、開発コンセプトをはじめ、ボディデザインとキーボードの関係、薄型軽量と剛性を両立するための工夫、11.6型モデル「VAIO Pro 11」と13.3型モデル「VAIO Pro 13」における内部構造の違いについてまとめた。
後編では、13.3型モデルのVAIO Pro 13をさらにパーツ単位まで分解し、11.6型との違いにも触れつつ、薄型軽量ボディに込められた秘密に迫る。話を伺ったのは前編と同様、開発を統括したプログラムマネージャーの宮入専氏、機構設計を行った渡村憲司氏、電気設計リーダーの小坂和也氏、そして商品企画を担当(インタビュー当時)した城重拓郎氏の4名だ。実機は渡村氏が分解した。
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薄型軽量ボディでも内蔵バッテリーは約11〜13時間駆動を確保
まずは、パームレストからキーボード中央付近までの直下に内蔵されているバッテリーから取りかかろう。バッテリー容量と公称の駆動時間は、VAIO Pro 13が37ワットアワーで約13時間、VAIO Pro 11が32ワットアワーで約11時間と余裕がある。いずれもバッテリーは4セル(2直2並)の構成だ。
今回はVAIO Pro 13のバッテリーを取り外した。薄型のバッテリーは、他のパーツを避けるように左右非対称のデザインを採用。樹脂フレームとシートで覆ったソフトパックが、9本のネジでしっかり固定されている。この構造から分かるように、他の多くのUltrabookと同様、VAIO Proの内蔵バッテリーは、ユーザーが交換することを想定していない。VAIOノートでバッテリーを取り外せない構造にしたのは、「VAIO Duo 11」(2012年10月発売)に続き2代目だ。
開発を統括した宮入氏は、「PCが単なる箱ではなく、デザインを強く求められる時代に、着脱式バッテリーだとどうしても美しい外観が損なわれたり、厚みが増してしまうのはよくないと思った。今回はプラットフォームを刷新し、この軽さと薄さで約11〜13時間のバッテリー駆動時間を実現でき、さらに着脱可能な拡張バッテリーを用意することで、この設計で問題ないと判断した」と語る。また、「バッテリーはソフトパックだが、ボディに収めた状態でねじれ試験を行うなど、強度の確保や漏れ対策といった安全性の向上に努めた」(宮入氏)という。
拡張バッテリーを装着すれば、24時間だって戦える?
VAIO Proには、オプションで本体底面に合体するシート型の拡張バッテリー「VGP-BPSE38」(9980円)が用意されている。VAIO Pro 13とVAIO Pro 11で使える共通オプションで、容量は37ワットアワーだ。電気設計を取りまとめた小坂氏は、「13.3型と11.6型で同じ位置にバッテリー用コネクタを搭載する必要があり、設計上の制約になったが、開発を進めるうえ拡張バッテリーを共通化できたのは大きい」と説明する。
これを使えば、バッテリー駆動時間の公称値はVAIO Pro 13で約26時間、VAIO Pro 11で約23時間と、驚異的なスタミナが得られるのは見逃せない。宮入氏によると、「理想は内蔵バッテリーだけで完結できることだが、VAIO Proの薄さと軽さを維持できるバランスが必要だった。このボディにJEITA測定法(Ver.1.0)で約11〜13時間というバッテリー駆動時間は、1世代前のPCでは難しく、十分という見方もできる。しかし、常時移動しながらPCをフル活用するようなシーンでは物足りないこともあるだろう。そういった方には、拡張バッテリーをおすすめしたい」とのことだ。
拡張バッテリーはフラットなデザインではなく、装着すると、本体とバッテリーの間に放熱のための空洞ができる。そのため、最厚部の厚さはタッチパネル非搭載時で33.8ミリ、タッチパネル搭載時では35.2ミリまで膨らみ、重さは約290グラム増す。薄型軽量の本体を生かすべく、もっと薄型化はできなかったのだろうか?
機構設計を担当した渡村氏は、この形状について「放熱の都合もあるが、それだけではない。(前編で紹介した通り)VAIO Proのくさび型フォルムは、パームレストの先端を設置面ギリギリまで低くして、キーボードを打ちやすくすることが目的なので、拡張バッテリー装着時でもこのフォルムを保つことが重要だった」と回答する。薄型ボディによる携帯性は後退するものの、Ultrabookでは軽視されがちな拡張バッテリーという選択肢が用意されているだけでも立派だろう。
ACアダプタは合体式の無線LANルータに注目
宮入氏は「付属のACアダプタも独自の工夫を凝らした」という。そのACアダプタだが、本体のサイズは39(幅)×104.5(奥行き)×26.5(高さ)ミリ、実測での重量は241グラム(本体のみ196グラム、電源ケーブル45グラム)だ。
VAIO Pro本体のように競合機種より特別軽くて小さいわけではないが、これはACアダプタに充電用のUSBポートを1基搭載したためで、それでも全体としては持ち運びが苦にならないコンパクトサイズにまとまっている。
ACアダプタの出力仕様は45ワット(10.5ボルト/3.8アンペア)、USBポートは5ワット(出力5ボルト/1アンペア)の出力に対応する。VAIO Pro本体のUSBポートを使わずに、ACアダプタでスマートフォンやモバイルルータの充電ができるのは便利だ。
さらに、オプションでこのACアダプタと合体して持ち運べるコンパクトな無線LANルータ「VGP-WAR100」(3980円)を用意しているのが目新しい。これこそが宮入氏が「独自の工夫」と語るポイントだ。
VGP-WAR100は、2.4GHz帯のIEEE802.11b/g/nに準拠した小型の無線LANルータで、ACアダプタのUSBポートに差し込んで利用する。これを使えば、有線LANしかない場所でのインターネット接続を無線LANで共有することが可能だ。VAIO Proは、旧機種の「VAIO Z(Z2)」シリーズや「VAIO T」シリーズが搭載していた有線LAN端子を思い切って省いたが、有線LANが必要なユーザーにとっての救済策を提供しているのは気が利いている。
小坂氏はVGP-WAR100を開発した背景について、「有線LANはボディの厚さに影響するため、薄さを徹底追求すると優先順位は下がるが、無線LANだけでは不安なシーンもまだまだ存在する。ただし、有線LANを使う場所は、基本的にACアダプタで電源を取れる屋内なので、そういった場所で本体からLANケーブルがぶらりと垂れるのではなく、ACアダプタにLANケーブルをつなげば、そこから本体は無線LANで快適に使える仕組みを考えた」と振り返る。
また、宮入氏も「ホテルの客室は有線LANが多いので、ACアダプタと合体したままコンパクトに持ち運べる小型の無線LANルータは、出張時にすごく便利」とアピールする。
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