特集「made in Japan:世界で売れてる、日本発のヒット商品」では、世界で愛されているさまざまな日本製ヒット商材を紹介している。カシオ計算機には、日本で企画して製造し、海外でヒットしているのだが日本では売られていないという商品が、いくつか存在する。前編では、インド向けの電卓「CHECK CALUCURATOR MJ-120D」を紹介した(参考記事)。
後編となる今回紹介するのは、イスラム教徒(以下、ムスリム)向けの腕時計。こちらも日本では買えない商品だ。実はこれ、意外な事情で商品化され、しかもひそかな大ヒットとなっている商品なのである。
そもそもムスリム向け時計とは、何ができる物なのか。どういった理由で売れているのか? 商品開発担当者に取材した。
「部品がなくなる」という事情で商品化が決定
このムスリム向け時計、2012年に発売されたもので、商品名は「PRAYER COMPASS」という。お祈りをする人向けのコンパス、という意味だ。もともと同じ商品名で「PRAYER COMPASS」のデジタルウォッチ版を1997年に発売していたのだが、部品として使われていたLSIが生産終了になるのに伴って、新しく“アナログ版PRAYER COMPASS”を作ろうということになった。
開発を担当したのは、普段はG-SHOCKやPROTREKのモジュール部分を手がけている三宅毅氏。アナログ版PRAYER COMPASSを担当することになったは良いが、97年に発売された前モデルを作った担当者はすでに社内におらず、身の回りにムスリムもいない。仕方なく、「まったく知識がないので『イスラム教徒の5大義務とは?』という基礎的な勉強から始めました。海外の販売代理店や、国内のモスクに、どんな機能が必要なのかヒアリングして開発しました」(三宅氏)。
そんな事情で作られたアナログ版PRAYER COMPASSだが、2012年に発売して、2年で累計40万台以上を売り上げている。同社の腕時計の場合、1モデルで年間で3万〜4万個売れればかなりのヒットというから、PRAYER COMPASSは文句なしの大ヒットと言っていい。
PRAYER COMPASSの基本機能は3つある。(1)お祈りのタイミングを教えてくれる (2)メッカの方向を示す (3)イスラム暦で何月何日かが分かる という機能がメインだ。
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