増やせばコストがかかり、減らすと社員から文句が殺到する——。こうした社内設備は多々あるが、その最たるものが「会議室」だろう。
必要なときに限って空きがなく、ダメもとで行ってみると案外、空いていたりする。足りないからといって簡単に増やせるものではないが、足りないせいで取引先との打ち合わせが滞ったら話にならない——。こんなジレンマに、多くの企業が頭を悩ませている。
KDDIも、そんな会議室不足に困っていた1社。情報システム部門も、「会議はパートナーと会う大切な場面であるにもかかわらず、お客さまを待たせしてしまうのは大きな問題」(KDDI ソリューション推進本部 部長の内田恵氏)と、頭を抱えていた。
空予約が“慢性的な会議室不足”を生む悪循環
なぜ、会議室は効率的な運用が難しいのか。課題の1つは「仮押さえが不要になったときや、アポがなくなったときの予約キャンセルのし忘れ」だ。KDDIの会議室は、グループウエア上から予約を行うシステムになっているが、使う必要がなくなっても、いったん押さえた予約がそのままになっているケースが多く、それがムダな「空予約」を生んでいた。
もう1つは会議が早く終わった際の「予約解放のし忘れ」。例え10分でも早く会議が終わった場合、その会議室が使える状態になっていれば、次の来客が早く到着してもすぐ部屋に通すことができる。これも解放されずに、予約をしたままのケースが多かったという。
こうした“慢性的な会議室不足”を解消するためにKDDIが選んだのが、内田洋行の会議室予約管理システム「SmartRooms」だった。
会議室1室に1台のタブレット、利用状況をリアルタイムに反映
SmartRoomsは、会議室の入り口にタブレットを取り付けて利用するシステム。画面には、「入室待ち」「空室」「使用中」といったステータスや会議内容、当日の予約状況が表示され、ひと目で“開いているかどうか”が分かる。
特徴は、会議室のリアルタイムな利用状況がグループウエアやタブレットに反映される点だ。例えば予約が入っているにもかかわらず、一定時間、タブレットの入室ボタンが押されなかった場合は自動で予約がキャンセルされ、その情報がグループウエアやタブレットに反映される。これで「予約キャンセルのし忘れ」による空予約を回避できるというわけだ。
会議が予定より早く終わった場合も、タブレットの「退室」ボタンを押せば予約が解放され、それが全社に伝わる。これにより、「19時まで予定していた打ち合わせが18時55分で終わったら、5分の余裕ができる。その5分間、お客さんを待たせずに部屋に通すことができる」といったように、来客対応の質が向上した。
KDDIではほかにも、受付の横にサイネージ端末(集中端末)を設置し、会議室の空き状況がひと目で分かるようにしている。会議室の予約を延長したいときにはサイネージの空き状況を見て会議室に向かい、入り口のタブレットから従業員番号を入力して予約を入れ、入室ボタンを押す——というフローで会議室が使えるようになり、利便性が高まったという。
なお、運用面のメリットとしては、既存のグループウエアと会議予約システムを二重で運用する手間がかからないことや、クラウド型サービスのため、導入コストが比較的安価な点が挙げられる。
空いた時間を“おもてなし”に使う
「空いた時間をおもてなしにかけるのが狙い。会議をしにくるお客さまをお待たせするというのは、あってはならないこと。大事なのは会議がスムーズに運営されること」——。KDDI ソリューション推進本部で部長を務める内田恵氏は、今回の取り組みをこう説明する。
ワークスタイル変革の一環として導入したものでもあり、その効果については「社員一人ひとりが、お客さまのためになることを自律的に考える時間がとれるようになるのは、働き方の改善につながるのでは」(内田氏)と期待を寄せている。
このシステムを提供している内田洋行によれば、会議室の約4分の1が「予約しても使われない“カラ予約”」だという。オフィススペースの効率的な運用や会議の質の向上が求められる今、業務改善のポイントとして目のつけどころが面白い。
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