ビール好きの人なら一度は「昔に比べてビールが高くなったなぁ」と悲しんだ経験があるだろう。値上がり傾向は最近も続いており、消費税が8%に引き上げられて間もないが、発泡酒や第3のビールについては、今後さらに増税される見込みと言われている。
とはいえ、苦しいのは消費者だけではない。むやみに値上げをすれば消費者が離れてしまう。飲料メーカーにとってもこれは厳しい状況だ。増税後も現状の価格を維持するならば、他の部分でコスト削減する努力をするしかない。その方法は、ペットボトルの軽量化や物流の見直しなどさまざまだ。
社内のITシステムや業務効率の改善を通じて、コスト削減を進めるのも大きな効果をもたらす。アサヒビールやアサヒ飲料、ニッカウヰスキーといった飲料、食品メーカーを抱えるアサヒグループホールディングス(アサヒグループHD)もそんな企業の1つだ。同社はITコスト削減のため、2010年からグループ共通のIT基盤の構築を進めていたが(参考記事)、2013年からは基幹系システムについてもグループ内で統合を図り、年間5億円のコスト削減を目指している。
同じグループ内とはいえ、会社ごとに扱う商材も違えば、現場のニーズも異なる。企業の中期目標で定められた3年という限られた時間の中で、10社近くもある各子会社のシステムを次々と変えていくのは至難の業だ。しかし、その厳しい状況を打開する“秘策”があったという。
各子会社でシステムがバラバラ、運用コストが増大
アサヒグループは設立から約125年という長い歴史を持つ。各事業を持ち株会社制にして統合したのが2011年7月のことだ。しかし、子会社それぞれが独自の基幹システムを使っていたことが問題になった。個々の企業では問題なく運用していたものの、グループ全体で運用のコストが膨らんでいただけではなく、ビジネスのボトルネックも生まれていたそうだ。
「例えば、生産部門と販売部門がそれぞれ独自のシステムを使っている場合、相手の業務を把握することが難しくなります。相手の詳細な状況が分からなければ、生産側は欠品のリスクを避けるために見積もりよりも製品を多めに作るでしょう。そうすると過剰な在庫が生まれてしまう。部門ごとで最適な仕事をしたとしても、全体の最適化にはつながらないことは多々あるのです」(アサヒグループホールディングス 斎藤宏樹さん)
そこで同社は、ニッカウヰスキー、天野実業、和光堂、アサヒフードアンドヘルスケア、エルビーの5社に共通のERP(統合業務パッケージ)を導入し、コスト削減と業務効率化を図ることにした。ちなみにアサヒビールなどについては、酒税法の関係で通常のERPパッケージでは対応しにくいため、採用を見送ったという。
複数のパッケージソフトを比べ、同社が選んだのは、東洋ビジネスエンジニアリングの「MCFrame」だ。標準で対応している機能や、他システムとの連携実績が多いこと、そして導入実績も豊富だったことが決め手になったという。「導入時のバージョンからアップデートしても追加費用がかからないことも魅力的でした」(斎藤さん)
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