既報の通り、マウスコンピューターから非常にユニークな製品が登場した。その名は「m-Stick MS-NH1」。スティック型のデザインで本体サイズは100(幅)×38(奥行き)×9.8(高さ)ミリ。スマートフォンよりも小さく、USBメモリを少し大きくしたようなサイズ、といえば分かるだろうか。
写真をみれば分かるとおり、とにかく非常に小さい。
今回、マウスコンピューター製品企画部部長の平井健裕氏に製品投入の背景や開発の裏話を聞いた。
PCの居場所を見つける新しいカタチ
—— 平凡すぎる感想ですが、すごく小さいですよね。自分も含めて、PC USERの読者はこうしたガジェットが大好きで、とりあえず買ってしまうのですが、これはそもそもどういった用途を想定しているのでしょうか。
平井 まず1つは、HDMI出力を搭載していることから分かるように、リビングルームのテレビに接続して使うシーンですね。パソコンがあたかもテレビのチャンネルの1つになったような感覚で利用して頂ければと思います。
これまでにもキューブ型の“リビングPC”を指向した製品はありましたが、コンパクトといっても設置場所に制約はありますし、それ専用とするには価格もそれなりでした。そうした点から敬遠していた方でも、このm-Stickくらいの手軽さなら、抵抗は少ないんじゃないかと思います。
例えば、今は自分ひとりが居間にいてネットを閲覧したいならタブレットを使いますよね。でも複数人ならどうかと考えた場合、ノートPCを持ってきてテレビにつなぐのか、大画面の液晶一体型PCをリビングPCとして設置しておくのか、といろいろ方法はありますが、m-Stickのようにずっとテレビに挿しっぱなしにしておいて、パソコンが使いたくなったらテレビの映像入力をリモコンで切り替えるだけのほうが楽ちんです。
実際、量販店様の話を聞くと、PC売り場だけでなく、テレビ売り場からの引き合いもあったりして、コンシューマー用途ではそうした活用シーンが多いのではないかと思ってます。
一方、法人向けでも、例えば個人経営の飲食店でテレビはあるけれども、お店のTwitterやFacebookといったSNSのためにPCも置いておきたい、といったときにm-Stickはうってつけでしょう。サイネージと言うほどプロ向けではない、でもテレビがデモンストレーション用の設備になっている、そんなところは結構多いと思うのです。テレビやディスプレイがすでに置いてある場所ならiPadよりも断然安いm-Stickは手軽に使えるかなと。
もちろん、デジタルサイネージや組み込み系の分野での活用も期待しています。壊れても差し直せばいいだけ、という利点は大きいでしょう。今後はこうした“プチembedded”的な用途も視野には入れていますが、まずは開発者からのフィードバックを受けてからの話になるかと思います。
それ以外では、そうですね……私がこんなことを言ったら本当はまずいのですが、個人的には、ガワを取り外して分解して、高専のロボットコンテストのようなものに利用したり、Androidを入れてみるとか、本当に好きに使ってほしいと思っています。もちろん、保証外にはなりますが(笑)。そうしたいろいろな使い方をする過程で、新しいPCの居場所が見つかるのではないか、そしてそれが面白いものであってほしいな、というのが個人的な願いです。
—— 開発にあたって難しい部分はありましたか?
平井 品質の基準をどこに持ってくるか、という点ですね。PCであればどんな状況で使われるのかといったノウハウがあるので、負荷のかかる場所や利用シーンを想定できます。ただ、今回の製品はまったく新しいジャンルなので、その基準作りに多くの時間を割きました。
もちろん、手に触れる部分がマウスコンピューターの規定温度を超えない、といった最低基準はありますが、例えば、この製品を解析で利用してCPU負荷が100%のまま24時間、1週間連続稼働したときの温度は一体どうなるか、などを考えると、際限がない状況でした。
平井 ただ、気をつけたのはやはりマウスコンピューターが販売する製品としての品質の部分です。具体的には、例えば、この製品で搭載できるEMMCが大きく分けて4種類くらいあるのですが、性能にばらつきがあるため採用していないものもあります。また、類似の製品がこれから出てくる可能性があるかと思いますが、粗悪な品質のものを購入した人が“スティックPC”にネガティブなイメージを持たれないように、開発から製品投入のタイミングまでを大幅に早めたのも苦労した点の1つですね。
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