ムーミンもサンタクロースも有名ですが、フィンランドのみなさんが何より愛しているのがサウナ。人口600万人ほどの国ですが、全国のサウナの数はなんと300万軒以上にものぼるそうです。日本でいう銭湯のようなサウナ施設はもちろん、会社にもサウナ、ホテルにもサウナ、自宅にもサウナ、別荘にもサウナ——学生用のワンルームマンションなど一部の物件を除いて個人の家でもあるのが当たり前だそうです。すごい情熱!
駐日フィンランド大使館には職員用の小さなサウナ、お客様用の大きめのサウナの2つがあり、年に数回「サウナ外交」が行われています。本国では、戦後米ソの東西両陣営の板挟みになったフィンランド大統領が難しい局面を「サウナ外交」で切り抜けた——という歴史もある格調高いおもてなしだそうです。
今回クリスマス前に女性だけの「レディーズ・サウナ」が行われるということでお呼ばれしてきました。こんな風にサウナを中心に集まるパーティーは仕事・友人関係問わずポピュラーなイベントらしいです。た、楽しみ……!
北欧の冬ドリンク「グロッギ」
午後6時半にサウナパーティーはスタート、まずは腹ごしらえです。今日の食事・飲み物の担当は大使館の男性職員のみなさん。「今日は女性の皆さんをおもてなしする日なので、我々が腕を奮います」(ミッコ・コイヴマー報道・文化担当参事官)とのことで、何が出てくるか楽しみですね。
北欧の伝統的なホットドリンク「グロッギ」は、ホットの赤ワインにスパイスで香りがついたもの。干しぶどうとアーモンドを加え、スイーツのようにいただきます。今日はアルコールでしたが、ジュースをベースに作ることも。老若男女問わずクリスマス前になるとよく飲むそうで、フィンランドでは冬の代名詞の1つだそうです。
少しふやけたレーズンに赤ワインがしみておいしい! 体があたたまります。家でも真似できそうなのでやってみたいです。
おしゃべりしながらつまむ軽食はぶどう、マスカットとジンジャーブレッドクッキー。クッキーにブルーチーズを乗せて食べるのは初めてだったのですが、予想以上に相性がよくてこれも真似したくなりました。伝統的なスタイル、ではもちろんないのですが、若い人を中心に広がっている食べ方だそうです。
いざ、入室!
お腹がふくれたところでサウナの準備です。「サウナ、どこにあるんですか?」と聞くと「そのドアの奥ですよ」とあっさり答えられてびっくり……ワインやクッキーを楽しむソファのすぐ横に入り口があります。直結。
見て分かる通り、紛れもなくサウナです。こんな空間が大使館の中にあるのがびっくりですね。写真の脇にはシャワールームや洗い場もあります。見た目も仕組みも日本の温泉にあるものと大きく変わらないので、みなさんおなじみの“あの”サウナ、という感じ。本場にある伝統的なスタイルとしては、煙突がなく小屋がまるごと真っ黒にいぶされる「スモークサウナ」があります。
フィンランド大使館の方に指導(?)を受けながらいざ入室。中の温度は100度くらい。6月にヘルシンキに出張で赴いた際、ホテルのサウナも入ったのですがその時はもっと温度が低かった覚えがあります。しばらくじっとしてるとすぐに汗が出てきます。木のいい匂いがして気持ちがいいです。部屋の隅にある石ストーブに水をかける「ロウリュ」をすると水蒸気が出て一気に温度が上がります。……あ、熱い。
適当なところで切り上げて、部屋に戻ります。火照った体にはやっぱりビールだよね、ということでワインの代わりにビールが出てきました。至れり尽くせりです。
本場では海に飛び込んだり外で寝転がったりするようですが、さすがに東京では難しいので外のテラスで涼みます。真冬のフィンランドでは、氷点下の凍った湖に飛び込むそうですよ……! 水風呂どころじゃない!
この後は各自自由にサウナと部屋を行き来します。化粧を落として汗をかいてバスローブを巻いて、ワインやビールやジュースやミネラルウォーターをなめながらのんびりしているとかなりの満足感です。しかも、体が冷えてきたらまたドアを開けてあの温かい空間に戻れる! 何これ楽しい。
食べて飲んでサウナ
各自のペースで楽しんでいると軽食が登場。今日は女性の日、男性陣は序盤で完全シャットアウト……なので部屋の入り口で受け渡して帰っていかれました。ありがとうございます。
ポテトやパスタのサラダ、ソーセージ、付け合せのディップや野菜、ナッキレイパ(ライ麦の薄いパン)などが並びます。個人的にフィンランドのマスタードが好きなので食べられてうれしかったです。
デザートは、現地ではおなじみの黄色いクラウドベリーを使ったパンナコッタ。収穫高が少なめで少し貴重な果物だそうです。
「サウナとパーティー」というよりも「サウナを楽しむためのパーティー」という感じでした。完全にサウナが中心! 「サウナは“裸の付き合い”、リラックスして仲良くなれるんですよ〜」と言われて若干ピンとこなかったのですが、確かに雰囲気が違うと気分も違いました。恐るべきサウナ効果。
そんな風にサウナは社交の場、親睦の場と捉えられているので、フィンランド人のみなさんは日本のサウナにテレビがあるのに「ありえない!」とびっくりするそうです。
どんどん汗をかくのが単純に気持ちよかったです。頭も心もすっきりします。確かに1日の終わりにこんなに気分になれるなら家にサウナがほしくなる……! 少しフィンランドのみなさんの気持ちを理解した日でした。
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