以前の回で、米Googleの米Skybox Imaging買収に代表される衛星ビジネスとIT技術の融合を紹介した。それに関連して衛星によるリモートセンシング市場全体の動きを今回は取り上げたい。
かつての軍事衛星レベルの画像が身近に
リモートセンシングとは、衛星や航空機に搭載したセンサー(可視光領域の光学センサーやレーダーなど)を用いて地球観測を行うことだ。これによって地表の土地利用、森林、農作物などの状況、海面の温度や色、雲の状態などさまざまな情報が得られる。その用途は気象観測、地図作成、陸域・海域監視など多岐に渡る。天気予報でおなじみの気象衛星「ひまわり」は衛星によるリモートセンシングの代表例だ。また、読者の皆さんが普段使っている「Google map」にも衛星画像が活用されている。
衛星によるリモートセンシング市場は、世界全体で約2000億円と言われており、年率10%程度の高成長が見込まれている。従来は公的機関が自らの目的に応じて衛星を保有することが主流であったが、近年は公的機関が民間の衛星運用企業からサービス購入をするケースが拡大し、さらに衛星画像の民間利用も拡大している。こうした取り組みを長年進めてきたのが米国だ。
米国では1980年代から衛星リモートセンシングの商用化に向けた法整備が始まり、1994年の大統領令で偵察衛星技術の一部民生転用を許可。1999年に偵察衛星技術を活用した初の民間衛星「IKONOS」を打ち上げた。2000年代以降は、政府による民間企業からの画像長期購入契約(アンカーテナンシー)や開発支援を行うことで民営化を進めてきた。
こうした機会をとらえて成長したのが米DigitalGlobeだ。同社は1992年に創業した衛星画像を提供する企業で、2002年に米国政府と長期契約を結び、2012年には同業の米GeoEyeと合併して、売り上げは約600億円に上る。同社は米NGA(National Geospatial-Intelligence Agency:国家地理空間情報局)が大口顧客で、政府向けビジネスが売り上げの80%以上を占める。その一方で、Google、Nokiaなどの地図サービスを提供するベンダーも顧客である。
同社の衛星は画像品質と解像度の観点で群を抜いている。2014年8月に商用では世界最高の分解能31センチメートルを持つ光学地球観測衛星「WorldView-3」を打ち上げた。従来、米国では50センチメートル以下の物体が写る画像を企業が一般公開することは禁じられていたが、2014年6月に法改正がなされて25センチメートルまでの画像販売が可能になった。背景にはDigital Globeによる訴えがある。一昔前の軍事衛星レベルの画像を誰でも買える時代が来ているのである。
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