データ分析を通じて顧客1人1人のニーズをくみ取り、サービス向上などに役立てる——そんな先進的な取り組みを行う企業が増えつつある。中でも、地域に根差した「共通ポイントカード」の分析でこれを実現しようとしているのが遠州鉄道(静岡県浜松市)だ。
静岡県西部を中心に鉄道、タクシー、小売店、ガソリンスタンド、宿泊施設、レジャー施設などさまざまな事業を手掛ける遠州鉄道グループでは、2000年代後半から共通ポイントカード「えんてつカード」を発行。2011年には高度なデータ分析ツールを導入し、今では約50万人のカード利用者のデータを分析しているという。
同社がデータ分析に本腰を入れ始めた背景や、それによって得られた成果とは——遠州鉄道でIT戦略課長を務める中村桂(かつら)さんに聞いた。
浜松市民の約半数が持つ「えんてつカード」データをどう生かすか
同社がえんてつカードを発行し始めたのは2008年のこと。「全国でチェーン店舗を展開している大手事業者などに対抗すべく、当社グループがさまざまな事業で持っている“顧客との接点”を共通ポイントでつなげるためにカード発行を始めた」と中村さんは振り返る。
カードの普及は想定よりもはるかに早いペースで進んだという。「クレジットカード機能付きのカードは最初の5年間で5万枚の発行を目標にしていたが、実際には初年度だけでその目標をクリアできた」。いまや発行枚数はのべ約50万枚と、浜松市の総人口(約80万人)の2人に1人程度がカードを持っている計算になるという。
一方、カード利用者の増加に伴って浮上したのが“利用データをどう活用するか”という課題だ。同社はえんてつカードの発行開始に合わせて簡易的な分析ツールを導入したものの、分析スピードの遅さと使い勝手の悪さに悩んでいたという。
「えんてつカードの利用データは年間数千万レコードにおよぶ。だが従来の分析ツールの性能は充分でなく、1カ月分の基本的な集計作業にも膨大な時間がかかっていた。また、新たに1つの分析を行うためには分析官がゼロからプログラムを作る必要があり、分析開始までにも時間がかかっていた」(中村さん)
カードの利用状況から得られたデータをいち早く活用し、顧客向けサービスなどに役立てるにはどうすればいいか——こうした課題を解決すべく、同社は高度なデータ分析システムの導入プロジェクトをスタートする。
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