世界各国による協業の必要性を主張
ニューヨーク大学科学技術専門校 次世代無線研究センター「NYU Wireless」でディレクタを務めるTheodore Rappaport氏は、「第5世代移動通信(5G)サービスを実現するためには、世界各国政府が協業することにより、ミリ波帯における周波数スペクトルのリリースに合意することが不可欠だ。米国は、実現の方向に向けて踏み出してはいるものの、まだ十分だとはいえない」と述べている。
同氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「コストを抑えながら、極めて高い普及率を実現するには、業界全体で同じチップセットを利用できるように共通の周波数帯を定めるべきだ」と答えている。
日本、欧州などで5Gの標準化向けた動きが加速
韓国と中国、日本は、5Gの実現を主導すべく、非常に積極的な取り組みを進めている。中でもNTTドコモは、2016年には5Gの標準化を実現する計画だとしている。同社は2014年5月、Alcatel-Lucent(アルカテル・ルーセント)やEricsson(エリクソン)、富士通、NEC、Nokia(ノキア)、Samsung Electronics(サムスン電子)との協業により、5Gモバイル通信技術の試験を実施することを発表した(関連記事:ドコモ、5G実験で国内外の通信機器6社と協力)。これにより、単位面積当たりのシステム容量を著しく高めることによって、6GHzを超える周波数帯域を占有することを目指していく他、M2Mサービスをサポート可能な無線技術を実証していきたい考えだ。
また、欧州連合(EU)の5G Infrastructure Public Private Partnership(5G PPP)も、5Gの実現に向けた取り組みを進めているところだ(関連記事:5G通信規格の策定団体、欧州で発足)。
一方、米国は……“規制の壁”
Rappaport氏は、「米国連邦の政策には、技術人材を強化していくための機会や、米国が将来的に大規模なブロードバンド市場において重要な役割を担う上で必要な投資を行う機会などを提供していくという視点が欠けている。私は米国市民の1人として、こうした点を非常に懸念している。ミリ波帯は、従来の無線通信を超える帯域幅や性能を実現できる可能性を秘めている。しかし、対応製品のサポートや推進に焦点を当てた周波数政策を実現しない限り、米国は今後、取り残されていくことになるだろう」と述べている。
しかし米国は、5G関連の規則策定の必要性を完全に無視しているわけではない。米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)の政策/規則部門担当次長を務めるMichael Ha氏は、米国ニューヨーク州ブルックリンで2014年4月23〜25日に開催されたBrooklyn Summitにおいて、「FCCは、95GHz未満の周波数帯を対象とした携帯通信向けミリ波帯の実現可能性について、調査通知を発行した」と述べている。また同氏は、ライセンスモデルに変更が生じるとみられることから、FCC内で、新たなライセンスモデルを検討する可能性があることについても示唆した。
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