長年にわたって数多くのITベンダーがビジネスデータの分析から経営や事業の意思決定につながる知見を得る「ビジネスインテリジェンス(BI)」ソリューションの訴求に注力してきた。ここ数年でBIソリューションを導入する企業は増えてきたものの、まだまだ業務の現場にまで浸透するという状況にはなっていない。
米IBM ソフトウェアグループ ビジネスアナリティクス戦略担当のアリー・マワニ氏は、「65%の企業が競争優位性につなげるためのデータ活用に苦労している」と指摘する。
その理由は3つあるという。1つ目はデータが多様化、拡散化していること。BIではデータをいかに早く収集・分析して意思決定につなげられるかが鍵を握る。そのための手法や計画を持ち合わせていない企業が多い。2つ目は顧客の理解が十分にできていないことだという。データ分析から得た知見や洞察を顧客との関係強化などにつなげる行動へうまく反映できていない。
3つ目は企業で活用しようとするデータの対象が取引実績といった過去の記録に縛られていること。これは「構造化データ」という表現に置き換えることもできる。従来の感覚や経験にとらわれない新しい洞察を手にするには、ソーシャルネットワークにおける顧客の声など、新しい種類のデータにも今まで以上に目を向けていく必要がある。
マワニ氏が挙げるBI活用のための鉄則とは、データ分析における大局的な目標を設定し、1つ1つの目的を全て具現化していくこと。具現化においてはデータを部分的に活用しながら分析によってどんな洞察を得られるのか、その洞察を行動にどう生かせるのかを確認して実際に行動する。このプロセスを早く回せるようになれば、BIソリューションを“モノにできる”になっていくという。
同氏によれば、IBMは「分析の簡素化」をコンセプトに掲げ、同社の研究部門で「PROJECT CATALYST INSIGHT」というクラウドベースの次世代型BIツールの研究開発を進めている。このツールの製品化などは未定だが、「統計分析の専門家のようなノウハウや知識を必要とせず、誰もが予測分析を行えるための技術」と説明する。
営業プロセスの改善を目的とする分析の場合、営業担当者が過去の取引実績のデータをツールに読み込ませると、自動的にデータクレンジングなどの最適化処理が行われ、瞬時に分析する。分析結果では例えば、商談から成約に至らなかった案件について、どのプロセスが問題になったのか、問題を解決すればどの程度成約の可能性が高まったのかといった洞察をグラフィカルに提示してくれる。
ツールが提示した洞察に関する情報は、ドリルダウンで詳細を確認することもできる。推奨テンプレートを使った分析なら、洞察を得られるまでに要する時間は数分程度とのことだ。
分析から得た洞察を目的実現のための行動につなげるかどうかはユーザー次第だが、同社が開発を進める次世代ツールは、その前工程ともいえるデータの最適化や分析での作業負担を低減することが目的だという。同社はこうした「分析の簡素化」を図るアプローチで、BIソリューションの利用拡大を狙う。
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