9月19日に「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」の発売を控えたNTTドコモは、9月17日にLTE(Xi)ネットワークに関する説明会を実施した。NTTドコモ 取締役常務執行役員ネットワーク部長 大松澤清博氏がドコモのネットワークの取り組みについて詳細を説明した。
1.7GHz帯+1.5GHz帯域をLTEとしてフル活用する「フルLTE」戦略
「広さ、速さ、快適さ」でネットワークの強さを主張する大松澤氏は、ドコモのLTEネットワーク戦略として、1.7GHz帯と1.5GHz帯を全てLTEとして活用する「フルLTE」に注力していくことを発表した。
大松澤氏は、「20MHz幅の1.7GHz帯(下り最大150Mbps)、15MHz幅の1.5GHz帯、10MHz幅の800MHz帯、15MHz幅の2GHz帯で合計60MHz帯を使っており、最強のネットワークを提供できる」と胸を張る。
エリアの「広さ」については、LTE基地局を2014年度中に9万5300局に増設すると発表。現在11万局あるFOMAの基地局と同等の規模に拡大するという。人口カバー率で言うと、「LTEとFOMA基地局ともに99%という数字になる。屋外だけでなく、屋内でも快適にLTEを使えるよう準備を進めている」と大松澤氏は話す。
エリアの「速さ」については、「バンド幅を全部LTEにすることで、2013年9月から国内最速の下り150Mbpsを提供してきた。112.5Mbpsの高速基地局は2014年度中に4万局に増設する」と大松澤氏は語った。
ドコモは、複数の周波数を束ねて高速化を図る「キャリアアグリゲーション(以下CA)」の導入も予定しており、30MHz幅を利用した下り最大225MbpsのCAの最終フィールド試験を2014年12月に開始することを明らかにした。CAは、最大40MHz幅で下り最大300Mbpsを記録するCategory6にて提供する予定だ。組み合わせる周波数について大松澤氏は、「例えば、全体のトラフィックの3分の2を占める東名阪では下り最大75Mbpsの800MHz帯と下り最大150Mbpsの1.7GHz帯を利用したCAを、それ以外の場所では下り最大112.5Mbpsの2GHz帯と1.5GHzを利用したCAをそれぞれ活用できるだろう」と話した。
また、ビジネス街や繁華街など、トラフィックが集中する場所でマクロセルの中にさらに小さなセルを入れる「アドオンセル」を活用することで、無線容量拡大とスループット向上を実現しているという。
「快適さ」については、2GHz/800MHz/1.5GHz/1.7GHz帯という4つの周波数帯を「クアッドバンドLTE」と名付け、「各場所に合わせた快適な使い勝手を提供している」(大松澤氏)とした。さらに、「特に、都市部を中心とした通信トラフィックが集中する場所には高速LTEエリアをさらに増強する。山手線沿線でも快適に通信できるようにしていきたい」と続けた。
そのほか、ドコモは新幹線や全国主要63路線でのパケット通信品質の向上や、首都高などの交通動線における音声品質の向上など、さらなる快適性向上の取り組みを続けている。
VoLTEや災害時ネットワークにも強み
ドコモは、日本初となる新通話サービス「VoLTE」を、2014年6月から他社に先駆けて提供しており、現時点で5機種約100万台がVoLTEに対応している。「既に800万以上のお客様に利用していただいており、通話時間も増加傾向にある」という。
そのほか、通信基地局の災害時における大ゾーン運用や、災害対策車両の配備など、ネットワークの信頼性にも強みを持っていることを明かした。
「iPhone 6/6 Plus」は東名阪で下り最大150Mbpsを実現
「iPhone 6/6 Plus」は、下り最大225MbpsのCAには対応しないものの、全国で15MHz幅の2GHz帯、10MHz幅の800MHz帯、東名阪では20MHz幅の1.7GHz帯で通信ができる。下りの最大通信速度は800MHz帯が75Mbps、2GHz帯が112.5Mbps、1.7GHz帯が150Mbpsとなる。また、iPhone 6/6 Plusは「VoLTE」も近々対応する予定だという。
700MHz帯に関する質問について大松澤氏は、「新しい周波数でiPhone 6/6 Plusも対応しているので、今年度(2014年度)中には利用できるように協議を進めていきたい。LTE専用の10MHz幅を利用する」と答えた。
各キャリアが足並みそろえて「顧客満足度ナンバー1」をうたう現状
質疑応答では各キャリアがネットワーク説明会で必ず提示する各調査会社の「顧客満足度調査 ナンバー1」という表示に対し、疑問の声が多く挙がった。確かに消費者からすると、各社がナンバー1をうたっている状況は混乱を招く。
これについて大松澤氏は「各調査は当然、公平で客観的なものであるべきだと思う。なるべく各社共通の基準を出していくよう努力したい」とし、NTTドコモ ネットワーク部技術企画担当部長の平松孝?氏は、「総務省含めてスループットの測定方法などについて議論を進めている。総務省の方針に従っていく」と答えた。あくまで総務省主体の取り組みで、各キャリアが主体性を持って共通の測定・調査基準を策定するという動きではなさそうだ。
料金プランや端末の下取り、各種割引キャンペーンなど、料金関連でも携帯電話業界はかなり消費者にとって分かりづらい表示が多いのが現状だ。ネットワークについても、客観的な基準で分かりやすい説明が求められている。今後の各キャリアの取り組みに期待したい。
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