職場から家庭まで利用シーンを広げつつあるネットワークカメラ
「ネットワークカメラ」はここ数年で低価格化が進み、身近なところで見かける機会が増えた製品の1つだ。
防犯・監視用途に使われる従来の用途はもちろんのこと、企業内であれば受付の様子や会議室の利用状況をモニタリングする用途にも利用でき、受付業務の無人化などに役立つ。最近では低価格化により、家庭でペットや赤ちゃんの様子を遠隔地から見るという用途でも、普及が進みつつある。
ネットワークカメラはLANに接続して利用するため、ルータやハブによって構成された昨今の社内ネットワーク環境への導入は容易だ。従来のアナログタイプの監視カメラと異なり、特定の録画機器に限定せず、LAN上のさまざまなPCから映像の閲覧が可能なこともメリットの1つと言える。
今回はこのネットワークカメラを導入するにあたっての、製品選びの基本ポイントをチェックしていこう。
そもそもWebカメラとの違いは?
さて、このネットワークカメラだが、ビデオチャットなどに用いるいわゆる「Webカメラ」と混同する人が多いようだ。カメラであるという点を除けばまったくの別物なのだが、まずはこの違いについてきちんと押さえておこう。
まずWebカメラは、PCに接続して利用するのが前提で、単体では動作しない。最近はOS側がドライバを持っていることがほとんどで、接続すると自動的に認識が行われ、利用可能になる。接続方式はUSBが一般的で、電源はUSBのバスパワーで供給される。ノートPCの画面上部に内蔵されているのもこのWebカメラであり、ビデオチャットなどで利用者自身を撮影するのが一般的な使い方だ。
これに対してネットワークカメラは、それ自体がIPアドレスを持ち、PCに接続することなく単体で動作する。撮影した映像をチェックするためにはPCないしはスマートフォン、タブレットなどが別途必要になるが、撮影そのものはPCがなくとも行える。それゆえPCを常時起動させていなくても利用できるのがメリットだ。
接続方式は有線LANケーブルが基本で、ハブないしはルータに接続して使用する。利用者自身を撮影するという使い方はあまりせず、俯瞰(ふかん)して広い範囲を撮影する使い方が主だ。
もしWebカメラをネットワークカメラの代用として使おうとした場合も、接続方式がUSBであるため、PCからの距離はどうしても限られてしまう。壁面や天井に設置するのは難しいだろう。
またネットワークカメラでは、パン(左右の首振り)・チルト(上下の首振り)の操作に対応することで広い範囲を映すことができる製品も多いが、Webカメラではそうしたギミックを備える製品はまれだ。LAN上のさまざまなPCやスマホ、タブレットから映像を閲覧できるネットワークカメラに対して、Webカメラは接続先のPCでしか閲覧できないのもネックになる。
このように用途がそもそも異なっており、利用スタイルも異なる両製品だが、製品の価格帯にも大きな差がある。Webカメラは低解像度の製品ならば1000円を切っており、メインストリームは2000〜4000円前後といったところだが、ネットワークカメラは1万円を切る製品は少なく、多くの製品が2万円前後、防犯を想定した屋外取り付けが可能なモデルになると10万円オーバーもあり得るというのが価格の相場だ。
また形状も、Webカメラはディスプレイの上端に固定できるクリップタイプが多いのに対して、ネットワークカメラは単体で自立するタイプ、または壁面にネジで固定するタイプが主流なので、外観で間違えることもまずない。たまたまネット上で見かけた気になる製品がWebカメラかネットワークカメラか分かりにくい場合、まずは接続方式、次いで価格および形状を見れば、そうそう間違えることはないはずだ。
トレンドは「無線化」「スマホ・タブレット対応」「NAS録画」
ネットワークカメラは低価格化がすすむ一方で、さまざまな新機能が追加されつつある。最近のトレンドになっている機能をいくつか紹介しよう。
1つは「無線化」だ。ネットワークカメラはその性質上、単体で離れたところに設置するケースが多く、製品によっては天井付近に備え付けられることが多い。そのため、LANケーブルの配線を省くことを目的に、無線LANを内蔵した製品は増加している。単に無線LANに対応しているだけの製品はかなり昔から存在するが、当時は有線モデルとの価格差がかなりあった。価格差が縮まり、標準装備となってきたのはごく最近のことだ。
もっとも、LANケーブルの配線が不要になっても、電源を得るためのケーブルはどうしても必要なので、完全なケーブルレスは不可能だ。それゆえ、LANケーブルで電源を供給するPoE(Power over Ethernet)に対応した製品もあるが、PoE対応の製品は高価になりがちという事情もあり、標準化には至っていない。現状では、依然としてACアダプタを電源に用いた製品がほとんどだ。
もう1つのトレンドは「スマホ・タブレット対応」だ。従来のネットワークカメラは、撮影した映像をPCから確認するのが一般的だったが、最近ではスマホアプリから参照できる製品が増えている。ダイナミックDNSを利用し、決まったURLにアクセスしてログインすれば、遠隔地からカメラの映像を見られるというわけだ。例えばペットショップに預けた飼い犬の様子を顧客がスマホで確認するといった、顧客向けサービスに活用できる。
これ以外のトレンドとしては「NAS録画」、つまりNASと連携しての録画機能が挙げられる。もともとネットワークカメラの多くは映像をストリーミング配信するだけで、単体での録画には対応しない。本体にストレージ領域がないため、必要に応じてPC側で記録するというのが従来の製品だった。
ここに登場したのが、ネットワーク上に設置されているNASにデータを保存できる機能だ。PCに録画するのであれば、PCの電源を常時オンにしておく必要があるが、NASであれば、基本的に24時間連続で稼働しているケースが多いと考えられるため、監視カメラと同様の使い方ができる。また記録した映像をネットワーク上のさまざまなデバイス上で参照するのも容易だ。記録容量の面でも圧倒的に有利となる。
もっともこのNAS録画機能は、画質などの条件に制限のある製品も多いので、求める条件での録画が行えるかどうかはチェックしておいたほうがよい。NASのメーカーでは、対応するネットワークカメラの情報を公開しているので、そちらをチェックしておいたほうがよいだろう。
ちなみにNAS以外に、本体に装着したmicroSDメモリーカードに録画できる製品もあるが、法人用途の場合、録画データを収めたカードを自由に取り外せることは、セキュリティの観点上やや問題がある。カメラの設置場所にもよるが、悪意を持った第三者によるデータの持ち逃げが発生しかねないことは、考慮しておいたほうがよいだろう。
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