カシオ計算機が、EXILIMシリーズのコンパクトデジカメの新コンセプトとして、“フリースタイル”というキーワードを掲げた「EX-FR10」を発表した。自分撮り、みんな撮り、後ろ撮りなど、さまざまな撮影シーンに柔軟に対応できる、カメラ部とコントローラー部が分離する独特の形状をしたこのカメラは、一体どんな思いから生まれたのだろうか。
新製品発表会で登壇したカシオ計算機 執行役員 QV事業部長の中山仁氏は、今年がデジタルカメラ「QV-10」が登場してから20年目に当たることを踏まえ、「カシオの役割は、スタイルを変えること」と話した。中山氏は、QV-10の商品企画などを担当していた人物。QV-10を作っていた頃はカメラを作ろうとしていたわけではないという。
「QV-10は、ビジュアルコミュニケーションをキーワードに開発した製品。新しいコミュニケーションツールとして作った。写真をプリントして人に見せるのではなく、液晶モニターで見せたり、データを人にあげたりもらったりできるようにしたかった。また、その後に開発した、ウェアラブルカードカメラ『EX-S1』では、カメラを常に身に付けて持ち歩けるようにした」(中山氏)
これらは当時としては画期的なことだったと自負している、と中山氏は話した。しかし、時代の進化とともに、これらはみな当たり前になり、今やスマートフォンでもできるようになっている。そこでカシオは、写真の撮り方に着目した。
「これだけ機器が進化し、できることが多様化したにもかかわらず、写真の撮り方は“構えて撮る”という形から変わっていない。一眼レフデジカメもコンパクトデジカメも、スマートフォンも、すべて構えて撮るスタイルだ。だからカシオは、構えて撮る必要がないカメラを開発した。それがEX-FR10だ。QV-10のように新たな文化を創っていきたいと思っている」(中山氏)
カシオ計算機 QV事業部 第二開発部長の野仲一世氏は、製品紹介のプレゼンテーションの中で「これまでのカメラは撮影者と被写体という関係を生んでしまっていた」と話した。
「仲間とバーベキューをしているときに、写真を撮ろうとすると、その瞬間だけ楽しい時間が中断されてしまう。あるいは子供のかわいい表情を撮ろうと思ったら、自分が子供と一緒に楽しんでいる瞬間は撮れない。構えて撮ることから解放するということは、自分も楽しんでいる場に加わりながら、自分を含めたみんなの写真が撮れるということ。カメラとコントローラーを分離することで、楽しい時間をそのまま楽しみつつ、写真が撮れるようになった」(野仲氏)
EX-FR10は、カシオが考える新しいビジュアルコミュニケーションツールの答えなのだという。楽しい時間を妨げることなく、楽しんでいる自分の姿も含めてありのままに記録できる。あるいは、今まで撮れなかったアングルから、楽しいその場の雰囲気をそのまま写真に撮れる。そのために、できるだけストレスなく使えるよう、使いたいときすぐ、かつ簡単に使えることを目指した。
もちろん撮る部分だけでなく見る、シェアするといった最近のカメラに求められる機能にもしっかりと応える。防水・防塵・耐衝撃といった性能を持つため、ともするとアクションカムのようなものにも見られがちだが、カシオ計算機としては、ターゲットはあくまでもファミリー層だという。
「ターゲットユーザーとしては、家族でレジャーに持って行き、気楽に使ってもらう、というところを狙っている。アクションカムは、どちらかというと動画撮影にウェイトを置いた製品が多い。EX-FR10は、どちらかというと動画より静止画が中心。また、自動で1日のハイライトをまとめたアルバムやムービーが作れる機能を用意したので、後で動画を編集したりする必要がないなど、簡単に楽しんでいただける工夫をしている」(中山氏)
発表会場では自分撮りやみんな撮り、後ろ撮りを実際にやっているシーンを再現。EX-FR10の可能性の一端を披露していた。実際に製品が発売され、このカメラで撮った写真がネットにアップされ始めると、また新たな発見や驚きがあるに違いない。
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