楽天は7月19日、スタートから1周年を迎えた電子書籍サービス「kobo」の現在の状況を明らかにした。「サービス開始当初は準備が至らず迷惑をかけた部分もあったが、1年かけて1つずつ改善してきた。コンテンツも充実し、ユーザー数は右肩上がり、満足度は着実に高まっている」(イーブックジャパン事業長 舟木徹担当役員)という。
日本語コンテンツ数は7月時点で14万点を突破し、年内の20万点突破を視野に入れている。著者や出版社の提供元も広がり、質の高いコンテンツをコンスタントに供給できる環境になりつつあるという。紙媒体と電子媒体を同時発売することで両方の販売数が増加するというデータも出ており、出版社と連携したキャンペーンなどを展開していく。
ユーザー数は非公開だが、前月比20%以上の成長が続き、右肩上がりで増加しているという。昨年12月にAndroidアプリ、今年4月にiOSアプリをリリースしたことが効果を上げており、年代で見ると30代(約31%)と40代(約35%)が中心で、7割以上が男性。専用端末で活字を読む30〜50代の「小説好き」、スマートフォン向けアプリでコミックを多数購入する20〜40代の「漫画好き」を2大セグメントとし、ボーナスポイントの付与やまとめ買いなどで購入を促進する。
1周年を記念して実施したポイント30%付与キャンペーンに、最大のライバルAmazon.co.jpが早くも追随。値下げ競争に陥るのではという質問には「まだ黎明期、新規ユーザーを獲得するための費用と考えている」(イーブックジャパン副事業長 田中はる奈さん)という。
専用端末に関しては、初期に比べて問い合わせ数は激減しており、特に昨年11月に発売した新端末「kobo glo」はユーザー満足度が高いという。ファームウェアは頻繁にアップデートしており、今後も改善を続けていく。19日には「kobo Touch」を1500円値下げして5480円としたほか、8日はコンパクトモデル「kobo mini」を1000円値下げして5980円で販売している。
スマートフォンアプリはAndroid、iOS共に好調。アプリユーザーはコミック購入者が多いことから、ビューワーを日本向けに独自開発し読みやすさを追求しているという。
今後の予定として専用端末の新製品開発のほか、PC用アプリケーションに書籍閲覧機能を追加(現在は購入のみ)、ネット書店「楽天ブックス」とのさらなる融合を挙げた。日本国外で既に販売している端末を日本市場に投入する可能性はあるが、現時点ではアプリの改善の方が優先順位が高いとした。
kobo本体の販売はレベニューシェアモデルで拡大したい考え。量販店や書店店頭での販売に際し、端末本体のマージンに加え、販売された端末から購入されたコンテンツの売り上げも店舗に分配する仕組みだ。近日中に開始し、順次拡大していく予定。初期設定やユーザーサポートまで含め、リアル店舗での販売促進に力を入れるという。
同社イーブックジャパン事業長の舟木徹担当役員は、国内電子書籍市場はAmazonの独走を許していることについて「EC利用者を電子書籍購入に促す動線が切れていた」と反省。「楽天ブックスとの連携を強め、よりスムーズにに相互利用できる仕組みを整えていく。とはいえAmazonのEC利用者の母数がそもそも段違いな分、それだけでは追いつけない。レベニューシェアなどの施策を中心にリアル書店との連携に力を入れたい」としている。
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