著者プロフィール:伊吹太歩
出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
テクノロジー関連の記事を取り上げるニュースサイト、米MIT Tchnology Reviewは8月4日、とあるスーパーコンピューターが企業の会議に変革をもたらす、という記事を掲載した。この記事はすぐに米ウォールストリート・ジャーナル紙をはじめとする各メディアで取り上げられ、またたく間に話題になった。
このコンピューターとは、米IT大手のIBMが開発した人工知能搭載スパコン「Watson(ワトソン)」だ。この高性能コンピューターは人間の話し言葉や文書を認識・理解し、蓄積した莫大な知識(情報)から最適な答えを導いて伝える(参照リンク)。
MIT Tchnology Reviewの記事によれば(参照リンク:A Room Where Executives Go to Get Help from IBM’s Watson)、ワトソンは会議室に“参加”し、正確な企業データから、市場状況などを会議の中でリアルタイムにアドバイスすることができるという。そうなれば、ビジネスシーンで会議の効率が飛躍的に上がることは間違いないだろう。
ただそれだけなら、会議に高性能なノートPCを持ち込むのとあまり変わらない気がする。だが、ワトソンの能力はPCがビッグデータを分析して、人間に情報を提供するといった程度のものではない。
例えば、会議中に役員たちが他社の買収案について、条件や概況を話し合うようなケースを考えてみよう。会議に“参加”しているワトソンは自社の資本や市況を踏まえつつ、会議中の会話情報を分析。その後に買収予定の企業リストなどを与えると、適切な買収案を提示する。会話のやり取りや文書を理解して正確無比な回答を導き出し、しかも経験を学んで蓄積していくので、どんどん賢くなっていくのだ。これがワトソン最大の魅力である。
この超高性能なワトソンが活躍できる場所はビジネスシーンに限らない。IBMもこの1月に10億ドルの追加投資を発表し、多業種への事業拡大を本格化させようとしている。
さまざまな分野への活用が考えられているが、中でも多くの人たちがワトソンの能力に最も期待している分野は「医療」だ。近い将来、ワトソンが人類の“救世主”になる可能性もある。
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