インターネットイニシアティブ(IIJ)が8月2日、一般ユーザーとIIJのスタッフが交流、情報交換する「IIJmio meeting #4」を都内で開催。「みおふぉん教室」と「みおふぉんでVoLTE端末は使えるの?」に続き、3つ目のセッションでは、「MVNOと事業法を巡る最新動向」と題して、ネットワークサービス部 モバイルサービス課担当課長の佐々木太志氏が、電気通信事業法の見直しに関係するさまざまな最新情報と、MVNOへの影響を紹介した。
電気通信事業法の見直しによるMVNOへの影響
今年は、スマートフォン業界のニュースが多い年だ。1月にはMVNOの接続料を半額にするというニュース、4月にはスマートフォンの契約にクーリングオフを導入するという総務省の方針、“不適切な”高額キャッシュバック、つい先日はSIMロック解除義務化など、端末やサービス以外にも気になる話題が報道されている。なぜ、こんなに業界ニュースが多いのか。
それは、2010年12月に総務省によってまとめられた「『光の道』構想に関する基本方針」の実施や、2011年6月に行われた電気通信事業法およびNTT法の改正から3年がたったからだ。これらは実施、施行後3年をめどに検証や見直しを行うことが決められていた。2014年はその見直し時期というわけだ。なお、2013年に政府から発表された「日本再興戦略」でも、「電気通信事業法等の具体的な制度見直し等の方向性について、来年中に結論を得る」とあり、2014年は固定と移動を問わず電気通信事業法を包括的に見直す年となっている。
その見直しを中心となって行っているのが、総務大臣の諮問機関の1つである情報通信審議会に設置された「2020-ICT基盤制作特別部会」だ。情報通信審議会は、電気通信事業だけでなく、放送や郵便などさまざまな課題について調査審議する有識者会議。2020-ICT基盤制作特別部会では、2020年に向けた情報通信制作のあり方について審議する。この部会は2月から続けられており、ここで話されたことやリークされた情報が、さまざまな記事となって報道されているのだ。
2020-ICT基盤制作特別部会で議論されている論点は8つ。NTTグループ、携帯電話主要3社の寡占化、料金、安全、安心にICTを利用できる環境整備、外国人にも利用しやすい環境の実現などについて議論されているが、その中で「MVNOのさらなる参入促進を通じた多彩なサービスの提供」というテーマも掲げられている。
IIJを含むMVNO各社は、MVNOとして意見集約、議論を行うため、「テレコムサービス協会」内にMVNOの事業者団体「MVNO委員会」を設立。「MVNOの事業環境の整備に関する政策提言」を発表したり、「MVNO2.0フォーラム」を開催したりしている。今後も「MVNOをさらに普及させるため、MVNOのサービスを多様化、高度化するための意見の発信や、実現に向けたMNOさんと話し合いを進めていきたい。2回目のMVNOフォーラムや、訪日外国人が通信サービスを使いやすくすることを目指す総務省の『SAQ2(サクサク) JAPAN Project』への参加もやっていきたい」(佐々木氏)
電気通信事業法改正では主に、SIMロック解除の義務化、クーリングオフの導入、本人性確認と青少年保護の3つのテーマが取り上げられている。佐々木氏は「各事業者でいろんな意見があり、なかなかまとまらないが、個人的な意見として」と前置きしながら、それぞれについての考えを語った。
SIMロック解除に関しては「MVNOではあまりSIMロック端末を扱っていないので、マイナスよりはプラスの影響が若干多いと感じている。懸念されるのは端末のサポート。説明が足りないとMVNOへの不信感につながる。ユーザーへの丁寧なサポート、動作確認の充実に取り組みたい」とした。
クーリングオフ導入については、「気軽に試せるようになり、むしろユーザーの増加に寄与するものと歓迎している。反面、キャリアメールが使えないなどサービスの面でマイナスに働くことも考えられる。サービスをしっかり説明しながらクーリングオフを前向きにとらえ、新たなビジネスチャンスとしたい」(佐々木氏)とポジティブにとらえている。
本人性確認と青少年保護については、「本人性確認では身分証明書の提示をお願いしている。今後、データ通信用SIMや プリペイドSIMを購入する際にも、身分証明書が必要だと考える人たちが一定数いることが明らかになった。これを、MVNOにとってマイナスだと考えるだけでなく、社会的な責任として対応していきたい。現在は議論の最中だが、これからも積極的に議論に参加して、我々の考え方を伝えていきたい」と佐々木氏は述べた。
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