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「考える」シリコンが現実に――IBM SyNAPSEが量産化にめど

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 米IBMは2014年8月7日(現地時間)ニューロシナプティックコンピューターチップ「IBM SyNAPSE」を正式に発表した。製造はサムスン電子の28nm製造プロセスを採用している。リアルタイムオペレーション時の消費電力は70ミリワット。100万個のプログラム可能な「ニューロン」と2億5600万個のプログラム可能な「シナプス」、そして毎秒毎ワット460億の「シナプティックオペレーション」を実現する。

 SyNAPSEは、われわれがよく知るノイマン型コンピュータとは全く異なるアーキテクチャを採用しており、スケーラビリティにおいては実質的に無限の拡張性を持つものになる。一方、アーキテクチャが全くことなることから、その利用にはプログラミングモデルそのものから学習する必要がある。このため、IBMは量産化のめどと同時に、教育プログラムも開発し、社員や顧客に提供していくと表明している。

 ニューロシナプティックコンピュータチップは、IBMが約10年来研究してきたものだという。2011年にはシングルコアのハードウェアを試作しており、2013年には、同チップ向けのプログラミング言語やシミュレーターを開発していた。今回、この技術を安定的に量産する技術を確立、その成果は学術誌『Science』に掲載される(論文はCornell Techとの共同研究)。

 開発プロジェクトそのものは2008年からDARPA(米国国防省国防高等研究計画局)のThe Systems of Neuromorphic Adaptive Plastic Scalable Electronics(SyNAPSE:神経形態学的電子工学システム)助成を受けており、IBMの他、Cornell Tech、iniLabsなどの企業が参加している。

 IBMではこの技術の量産化について「補聴器用電池に相当するエネルギーで稼働する郵便切手のように小さいニューロシナプティックスーパーコンピューターの技術は、視覚、聴覚、マルチ感覚性アプリケーションを可能にすることにより、科学、技術、ビジネス、行政、社会に変化をもたらす可能性」があるとしている。低消費電力で高い処理能力を持つことから、センサーネットワークなどの現実社会のフィジカルかつ多様な情報を処理しながら、自律的な学習をする、いわば思考するコンピューターを実現するものになると考えられる。

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