米Googleの次のムーンショットプロジェクトは人体の謎の解明──。米Wall Street Journalが7月24日(現地時間)、同社のGoogle X部門が取り組む新プロジェクト「Baseline Study」について、同プロジェクト統括者への取材を基に報じた。
このプロジェクトでは、協力者から抽出する膨大な生体データ(心拍数などだけでなく、尿、血液、唾液、涙などの成分も)を解析することで、健康のBaseline(基準値)を割り出すというもの。特定の病気について研究するのではなく、生体の状態や病態を示す指標、「バイオマーカー」を発見し、健康維持や病気の早期発見に役立てることが目的だ。
プロジェクトを統括するのは昨年3月にGoogle Xに参加したアンドリュー・コンラッド博士(50)。同氏が取締役を務める米ヘルスケア企業Flatiron Healthのプロフィールによると、同氏はUCLAで細胞生物学の博士号を取得し、米ヘルスケア大手LabCorpの遺伝子研究所を立ち上げた。コンラッド氏はBaseline Studyのために、Google Xで約100人の生理学、生化学、光学、分子生物学の専門家チームを編成した。
生体データの収集は、Googleと提携する臨床試験企業が行い、Googleは完全に匿名化されたデータを受け取る。まず175人のデータをパイロットとして収集して、その後数千人から収集する。データ収集には、1月に発表した「スマートコンタクトレンズ」の他、Google Xで開発するウェアラブル端末を利用するという。
収集したデータは研究目的にのみ利用し、例えば保険会社などに提供することはないという。Googleはこうした研究が倫理的なリスクを伴うことを認識しており、研究は第三者の審査委員会が監視するとしている。
コンラッド氏は、この研究の成果は医療の進歩に役立ち、これは“世界の情報を体系化し、役立てる”というGoogleのミッションに沿っていると語った。同氏とともに研究に従事するスタンフォード大学のサム・ガンビール博士は「コンラッド博士はこの研究が1〜2年で成果の出るソフトウェアプロジェクトではないことを理解している」と語った。
Baseline Studyのパイロット研究は今夏にスタートする。
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