2013年、ドイツの貿易収支に電力輸出が寄与したことが分かった。ドイツのシンクタンクInternationales Wirtschaftsforum Regenerative Energien(IWR、再生可能エネルギー国際経済フォーラム)が2014年7月に発表した内容によれば、電力の純輸出額は昨年1年間で19億5000万ユーロに達した*1)。近隣諸国への輸出額は、37億6000万ユーロ、輸入額は18億1000万ユーロだった。
*1) ドイツ連邦統計局のデータによる。2013年の平均レートである1ユーロ=130円で換算すると約2500億円。
1kWh当たりの単価でも理想的な結果となった。ドイツの電力会社は電力を平均4.9ユーロセントで輸入していることに対して、輸出時の単価は平均5.2ユーロセント。つまり輸出時の単価が輸入時を上回っている。この輸出単価は電力スポット市場の平均価格である3.79ユーロセントよりも高い。IWRによれば、輸出入の単価がこのような水準になった理由ははっきりしないという。
再生エネ拡大がドイツの原子力を消し去る?
なぜ輸出単価が高いことが不思議なのだろうか。それはこれまで以下のような主張があったからだ。ドイツの卸電力市場では、2008年から「ネガティブプライス」が認められている。つまり、大量の電力が余る場合、電力の売り手が対価を受け取るのではなく、対価を支払う*2)。
ドイツは周辺諸国と比較して再生可能エネルギーの導入規模が最も大きい。従って、ネガティブプライスはもちろん、非常に低い価格で電力を売らなければならない機会が多くなるだろう。これは電力の投げ売りにつながり、ドイツにおける電力の貿易収支が赤字になる可能性が高い根拠とされてきた。
このような主張とは正反対の結果になったことが興味深い。
*2) 発電コストが再生可能エネルギーよりも高くなることがある電力源のうち、容易に出力を上下できないタイプの発電が、ネガティブプライスを負担する形になる。典型的には原子力だ。
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