「正直言って、特に感慨はないですね」——2月に全世界1000万ユーザーを超えたイラスト投稿SNS「pixiv」。開設から6年半で迎えた節目だが、「このペースで増えていけばこれくらいには超えるなと思っていたくらいで……特別大きな目標というわけでもなかったので」と片桐孝憲社長はあっさりと振り返る。現在も3カ月に100万人ペースで順調にユーザーを増やし成長を続けるpixivの、世界を見据える今と未来を聞いた。
pixivが開設されたのは2007年9月のこと。「イラストを見るためにいろんなサイトにアクセスするのは手間がかかるし、簡単に見てもらえる場所があれば便利」という理由で作られたサイトは描き手を中心に人気を集め、2年を待たず09年6月に100万ユーザーを突破した。現在まで加速度的にユーザーを増やし続けており、投稿されているイラストはアニメや漫画のようなタッチから、CG作品、水彩画や日本画まで幅広く、累計作品数は4700万点にのぼる。
7月時点でユーザーは1100万人を超え、1日の平均投稿数は3万点、月間PVは38億にまで成長。現在は新規ユーザーの60%が海外からで、特に中国、台湾、韓国などアジア圏からの利用が多いという。
ショーケースではなくコミュニティー
pixivの特徴として片桐さんの口から何度も繰り返される言葉が「コミュニティー」だ。自分の作品をまとめるポートフォリオやショーケースとしてではなく、ユーザー同士の反応があるからこそ成立している場所であることが重要——と話す。
「YouTubeの人気動画って多分そこまで興味がないですよね? それはYouTubeがコミュニティーではないから。ニコニコ動画もそうだが、ランキングが機能していること自体が場所全体の温度感を知るニーズがあるということ」(片桐さん)
海外向けの他言語化やローカライズなどを積極的に進めているが、あくまで「生き残るためにやらないと仕方がない」という意識。「ユーザー数が増えても売り上げには結びつにきくく、投資の方がずっと大きい。正直面倒くさいことばかりで楽しくもなんともない。1000万ユーザーを超えても常にてんてこまい」と笑う。
それでもユーザー獲得を進める理由は「新しい人が入ってこないコミュニティーは死ぬ」という信念だ。サービス自体の規模や認知拡大以上に、コミュニティーとしての鮮度や熱さを保つことを考えているという。
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