IT業界にも迫るグローバルな再編加速
重電業界でグローバルな再編が加速していることを報じたニュースが先週、世界を駆け巡った。フランスの重電大手アルストムのエネルギー部門を巡り、米ゼネラル・エレクトリック(GE)対独シーメンス・三菱重工業連合による激しい争奪戦が約2カ月にわたって繰り広げられ、結果としてGEに軍配が上がったというニュースだ。
グローバルな重電業界では、最大手のGEをはじめ、シーメンス、日立製作所、東芝、三菱重工業、米ハネウェル、アルストムといった大手が、需要が拡大しているエネルギーを巡って激しい市場争奪戦を繰り広げている。一方で各社はこれまで、例えばGEと日立が原子力発電事業で提携したり、日立と三菱重工が火力発電事業を統合するなど、合従連衡も進めてきた。かつてはGEがハネウェルを買収しようとして破談になった経緯などもある。
今回の新たな動きによって一段と巨大化したGEに対し、日本勢をはじめとした大手各社がどのように対抗していくのか。各社の次の一手が注目されている。
こうした重電業界の動きを見てふと感じたのは、同じような合従連衡の構図である企業向けを中心としたIT業界でも今後、グローバルな再編が加速するのではないかということだ。重電業界の再編が加速しているのは、エネルギーというインフラ事業をグローバルで展開して勝ち抜いていくには、まさしく規模がモノを言うからだ。それは、IT分野においても今後主戦場となるクラウド事業に対して同じことが言えるのではないか。いわばIT業界の次なるステージである。
そこで、筆者がかねて抱いてきた持論を述べてみたい。企業向けIT事業分野における大手ベンダー同士の「グローバルで勝ち抜くための協業」への期待ということで、1つの仮説を立ててみたい。本連載コラムでは過去にも触れたことがあるが、最近になって新しい動きも出てきているので、あらためて主張を込めて取り上げたい。
企業向けIT事業分野で、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを総合的に提供できるグローバルなメジャープレーヤーといえば、米国のIBM、HP、そしてSun Microsystemsを買収したOracleなどに絞られる。国産大手の富士通、NEC、日立製作所もこの一角に名を連ねたいところだ。
期待したいグローバルな3大勢力の形成
そこで立てた仮説とは、特にミッションクリティカルなサーバ分野で長年の戦略的協業関係を築いてきた、Oracleと富士通、HPとNEC、IBMと日立製作所が、それぞれさらにパートナーシップを深めて、企業向けIT事業分野におけるグローバルな3大勢力を形成するというものだ。
いずれの組み合わせとも互いに競合する分野はあるが、総じて米国勢にとっては国産勢の製品開発力や高品質、ITサービス力を魅力に感じているはずだ。一方、国産勢にとってはそれぞれのパートナーのグローバルブランドを生かして規模がモノを言うビジネスを展開できるところに大きなメリットがある。とりわけクラウド事業で協業したならば、それが最大の強みになるはずだ。
この仮説はあくまで筆者の私見だが、最近になってこうした方向もあり得るのではないかと受け取れる言動も出てきている。
例えば、HPとNECが今年3月、これまで両社の間で培ってきたIT分野における協業関係を、企業ネットワークのSDN(Software-Defined Networking)領域に拡大することを発表した。詳しい内容については2014年3月17日掲載の本連載コラム「NECとHPの協業はどこまで広がるか」を参照いただくとして、これを弾みに両社の協業範囲がさらに広がっていく可能性は、大いにあるというのが筆者の見立てだ。
また、Oracleと富士通の関係については、富士通が今年5月に開催したプライベートイベント「富士通フォーラム2014」で講演した日本オラクルの杉原博茂代表執行役兼CEOがこんなことを語った。
「オラクルはクラウドビジネスにおいて“Empower MODERN BUSINESS in the Cloud”というビジョンを掲げている。この意図するところは富士通が掲げる“Human Centric Innovation”と同じだ。富士通と一緒にクラウドでイノベーションを提供できればと考えている」
この発言は杉原氏個人の思いとも受け取れるが、同氏は米国本社グローバル事業統括のシニアバイスプレジデントの役職にもあるだけに重みがある。恐らく両社の間でクラウド事業について協業の話が進んでいるものと見られる。
筆者はこの仮説がとりわけ国産勢にとってグローバルのプレゼンスを一層高めるために有効ではないかと考えている。重電業界における最近のダイナミックな再編の動きを、IT業界も感度良く捉えて次なるステージへと迅速に突き進みたいところである。
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