6月25日にカシオ計算機が発表したG-SHOCK「GPX-1000」は、世界で初めて、GPS電波と標準電波の両方を受信できる機能を備えた腕時計だ。スイス・バーゼルで毎年春に開催される世界最大の宝飾・時計の見本市「バーゼルワールド2014」にコンセプトモデルとして参考出品されていたが(参考記事)、このたび正式に製品化された。
→地球上どこでも自動で時刻合わせ:世界初の「GPS+電波受信」、ハイブリッドG-SHOCK発表——カシオ(参照記事)
→BASEL WORLD 2014:カシオ、世界初「GPS+電波時計」G-SHOCKやスマホ連携アナログウオッチをバーゼルで参考出展(参照記事)
実はGPW-1000には、ソニーのGPS LSIチップが採用されており、これがキーデバイスとなっている。カシオとソニーがタッグを組んで、GPS LSIチップのカスタマイズと徹底した省電力化を行うことによって、GPW-1000の製品化が実現したといっていい。
なぜ「電波+GPS」というハイブリッドにチャレンジしたのか。実際に製品を作る中で難しかったポイントはどこか? カシオ、ソニー両社のエンジニアに取材した。
電波+GPS、ハイブリッドにするメリットは?
そもそも、電波受信機能とGPS機能を両方載せるメリットとは何だろうか。電波時計とGPS時計、いずれも最大のメリットは「自動的に正確な時刻を取得できるので、ユーザーが針を動かして時刻合わせをしなくて良い」ということ。電波を受信して時刻を合わせているという点において両者は同じだが、受信している電波が異なる。
電波時計が受信しているのは、基地局から送られる標準電波で、標準時刻電波を民間に開放している基地局は世界に6カ所しかない(日本に2基、米国、英国、ドイツ、中国に1基ずつ)ため、カバーエリアの外に出てしまうと時刻が受信できない。また電波時計の場合、自分がいまどのタイムゾーンにいるのか、ユーザーが「ホーム都市」を設定する必要がある。日本のようにタイムゾーンが一つしかない国だとあまり問題にならないが、海外に行った時や、米国やロシアなど複数のタイムゾーンがある広い国の中で移動した場合は、今自分のいる場所はどのタイムゾーンなのかを知らないと電波時計では時刻合わせができない。
一方のGPS時計は、カーナビなどと同じくGPS衛星から送られる電波を受信して時刻を合わせる。GPSは全地球測位システムの略であることからも分かるように、地球上のどこにいても正確な時刻が分かる……というのがメリットだ。
「電波時計は、電波塔がない地域では正確な時刻を受信することができません。(標準電波を受けられないエリアにいる場合)自分がどこのタイムゾーンにいるか分からないと、時間を合わせることができないんですね。一方、GPSは屋外にいる限り世界中で自分の位置を確認し、正確な時刻を知ることができます。しかしGPSウオッチは消費電力が大きい。これまで出したGPSウオッチはバッテリーが大きいため、時計のサイズも非常に大きくなってしまい、またバッテリーのもちも悪いという課題がありました」(カシオ計算機 時計事業部 モジュール開発室 第一開発室の尾下佑樹氏)
実はカシオではこれまで、1999年、2000年、2006年と3回GPSウオッチを出しているが、いずれも腕時計としてはかなり大きなバッテリーを積んでおり、また充電が必要だった。同社にとって4回目のGPSウオッチへのトライであるGPW-1000は、ソーラーパネルで得る電力だけで動き、充電も不要な腕時計だ。しかしそのためには、従来のGPSウオッチに比べ、大幅に消費電力を抑えなくてはならない。このためカシオとソニーの両社は、搭載しているGPSチップの徹底的な省電力化に取り組んだ。
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