6月25日(現地時間)から2日間、アメリカ・サンフランシスコでGoogleの開発者向けイベント「Google I/O 2014」が開催された。
目玉は、Androidの次期OSとなる「L」の発表だ。「L」は開発者向けのプレビュー版の名称だが、正式にリリースされたときに、コードネームにLから始まるどんなスイーツ名が使われるのかは、今のところ明らかにされていない。
まるでAppleのようなデザインに?
今回のLは、これまでのAndroidのライバルを意識した改良が行われているのが特徴だ。
まず、注目は「マテリアルデザイン」だ。シンプルな構成になりつつも、色鮮やかな印象に生まれ変わった。これを見たアプリ開発者は「これまでGoogleは『デザイン』とは無縁の会社だと思われた。まるでAppleのようだ」と語った。
確かに、AppleはiOS7で、これまでのデザインを一新し、フラットデザインへとかじを切った。まさにLはiOSのデザイン変更を意識したようにも感じる。
また、Lでは、Googleが販売しているノートPC「ChromeBook」との連携も強化している。Android上の通知や電話の着信がChromeBook上で確認できるようになったのだ。ChromeBook上で、一部のAndroidアプリを動作させることもできる。
2013年、Androidの開発統括者に、かつてはChromeOS責任者だったスンダール・ピチャイ氏が就任し、ピチャイ氏が2つのプラットフォームを兼務するようになった。まさにピチャイ氏の兼務によって、AndroidOSとChromeOSが近づいたように思われる。
Appleも、先日のWWDCでiPhoneでの音声着信をMac上で受けられるという機能を発表したばかりだ。このあたりも、両社でお互いをけん制している様子がうかがえる。
AppleがiOS8で、アプリ間の連携や通知センターでのウィジェットに対応し、Andoridに追いついたかと思えば、Androidは「ファクトリーリセットプロテクション」を導入し、盗難されないような仕組みを作った。このファクトリーリセットプロテクションはAppleがiOS7で導入した機能だ。
世間では「セキュリティ面ではiOSのほうが優れており、マルウェアの被害はAndroidのほうが断然多い」という指摘があるなか、今回、Androidではマルウェア対策に本腰を入れてきた。お互いがお互いの良いとこ取りすることで、使い勝手が近づいてきている感は否めない。
低価格端末はFirefox OSとの一騎打ちに
一方、「Appleには絶対真似できない」と思われるのが、「Android One」という取り組みだ。主に新興国向けに安価なAndroidスマホを製造し、販売できる仕組みを整えた。Android OneではOSなどがパッケージ化され、OEMメーカーは安価にAndroid端末を製造、販売できるようになる。GoogleによるOTAアップデートにも対応しており、低価格で最新のファームウェアが利用できる。
Android Oneは今秋、インドからスタートする予定。新興市場ではこれからスマホの需要が伸びてくるとされており、「いかに安く作るか」というのがメーカーやプラットフォームの課題となっている。
そんな中、彗星(すいせい)のごとく現れたのがFirefoxOSで、2014年2月のMobile World Congressでは、中国のチップセットメーカーと組み、25ドルでスマホが作れる仕組みを披露して話題となった。
Android Oneは25ドルには及ばないものの、100ドル以下でスマホを作れるようになるという。Appleとしては、新興国でシェアを伸ばそうと思っても、100ドル以下で安売りするわけにはいかない。「割安端末でシェアを伸ばす」という点ではAndroidとFirefoxの一騎打ちとなりそうだ。
Microsoft対策も抜かりない
AndroidでAppleやFirefoxを意識した改善を見せるGoogleだが、当然のことながら、Microsoft対策も抜かりない。クラウドサービスのGoogleドライブにおいて、MicrosoftのWord、Excel、PowerPointのファイルを、ネイティブモードで開き、編集できるようになったのだ。
これはGoogleが2年間に買収したQuickOfficeの技術を使い、ネイティブモードでOffice互換のファイルを扱うというものだ。これにより、クラウドとの接続を気にすることなく、Officeファイルを編集できるようになった。
Microsoftは、ここ最近、「モバイルファースト、クラウドファース」をモットーにクラウド対応のOffice365をiPadにも使えるようにするなど、なりふり構わぬマルチデバイス展開を進めている。また、MicrosoftのタブレットであるSurfaceは、値段が安いということもあり、世界的なヒットになりつつある。
「Officeとタブレット」という組み合わせで、Microsoftが勢力を伸ばしていることを考えると、Googleとしても、Microsoftが強いとされるOfficeを攻め入るのは自然な流れかもしれない。
ウェアラブルはGoogleが先行する
スマホ、タブレット、クラウドサービスで各社が入り乱れる中、Googleがひとつ抜け出した感があるのがウェアラブルの分野だ。
2年前に盛大に発表され、2013年、開発者向けに販売された「Google Glass」は、Google I/O 2014の基調講演では特にアップデートはなかったが、腕時計型端末「Android Wear」は大きなステップを踏み出した。
端末メーカーとして、LGエレクトロニクス、Motorola続き、サムスン電子が仲間入りを果たしたのだ。すでにLG「G Watch」、サムスン電子「Gear Live」が販売を開始(日本はG Watchのみ、Gear Liveは近日発売)、Motorola「moto 360」は今夏の発売を予定している。
Googleは、Google I/Oに参加した6000人近い開発者にG WatchもしくはGear Liveのどちらを「お土産」として配布。まず使ってもらうことで、対応アプリを作るモチベーションを上げたいようだ。
実際にGear Liveを使ってみたが、確かにメールの着信なども分かるので、いちいちスマホを見るという手間が減った気がする。さすがに人前でGear Liveに向かって「OK、Google」と音声入力で調べ物をしようとは思わないが、面白いアプリが出てくれば、使い続けようかなとは思った。
つまり、Android Wearを生かすも殺すも開発者次第、というわけだ。
Androidのエコシステムを武器に腕時計型端末で差別化を図るGoogle。Appleよりもいち早くウェアラブルに着手したことで、このリードを保つことができるのか。2015年のGoogle I/Oのころには、その答えが出ているかもしれない。
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