前回に引き続き、総務省 情報通信政策研究所「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査(速報)」のデータを元に、現代の高校生とネットの付き合い方を考察する。今回はSNSの利用に絞って、利用傾向を探ってみる。
高校生が利用するSNSのトップはLINEで、全体平均としては85%、次いでTwitterが66.9%。3番手のfacebookが24.3%しかなく、この2者が突出している。
SNSの利用目的としては、もちろん「友達や知り合いとコミュニケーションをとるため」が平均71.8%と最多ではあるが、次いで「ひまつぶしのため」が52.3%と高い。3番目が「学校・部活動などの事務的な連絡のため」が48.9%と続く。1番目、3番目は目的があっての行動と言えるが、2番目に無目的な行動が入っている点が気になる。
依存度が高い生徒と平均値を比較してみると、「ストレス解消のため」「現実から逃れるため」「新たな友だちをつくるため」の3つが突出している。また逆に平均よりも少ない項目としては、「友達や知り合いとコミュニケーションをとるため」、「学校・部活動などの事務的な連絡のため」がある。学校で孤立傾向があり、現実の人間関係が“非リア充”であることから逃げたしたいという衝動が、SNSに走らせているという状況が垣間見える。
「SNSでよくやり取りする人数」のデータでは、ネット依存度の高い生徒特有の動向が分かる。家族や学校の友人など、リアル社会でのコミュニケーションは平均と変わらないが、依存傾向が高い生徒では「ソーシャルメディア上だけの友だち」が異様に多い。
付き合う人数が多ければ、それだけもたらされるコミュニケーション量も多くなり、結果的に長時間SNSに向かわざるを得ない。だが物理的に、100人近い人数のネット上の友人と常時コミュニケーションできる時間はない。おそらく次々にネットで友人を作っていった結果、人間関係が肥大化したと見るべきである。このような行動には、リアルの人間関係では味わうことができなかった認証欲求への、満たされない飢えや渇きのような凄みを感じさせる。
自分自身をどう思っているか
一方、SNSを利用する際に、悩んだり負担に感じる項目も調査されている。これをネットの依存度高、中、低で並べると、面白い傾向が分かる。平均での最多は「あてはまるものはない」だが、これは特に依存度が低い生徒が、ここに上げた項目にあてはまっていないからである。
一方依存傾向が高い生徒ほど、想定の質問への合致度が高く、逆にあてはまらないという数値が少ない。ヘビーユーザーの悩みの傾向は、大人が想定したものとほぼ一致するのだが、依存度中や低の生徒の悩みがすくい取れていない点が、今後の課題であろう。
ネット利用全般において、日常生活へどのような影響があるかの調査では、依存度が高まれば引きこもり気味になるという傾向が見られる。
ネット利用全般に対する調査なので、SNSが原因とは言い切れないが、ネット利用のうち一番利用時間が長いのがSNSなので、人とのコミュニケーションがネットに偏ると、必然的にリアルな人間関係を築く時間やチャンスを失っているという傾向もまた、見て取れる。
例えば仕事では、難しい交渉も会って顔を見て話をすれば、うまく気持ちが伝わってそれほどひどい結果にはならないということもよくある。一方で主導権を取るドライな交渉ごとは、むしろメールベースで進めた方がいい場合もある。
こういった硬軟使い分けるという感覚は、リアル社会とネット社会の両方をうまくバランスしないと、なかなか身につかない。今の学生は、もっともこのような事を学びやすい、理想的な環境にあるわけだが、それをうまく舵取りし、環境を整えてやるのが、子供を見守る大人の役割であろう。
小寺信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。
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